17人が本棚に入れています
本棚に追加
走って、走って、走り抜いて……
「うりゃあーッッ!!」
私は間一髪門を通り抜けた。
空間が歪み、辺りさえ見えなくなった。
『桃香…、もし無事別の世に行けたならば……人の子として生を歩め』
『……うん。でも……』
『母さんは、鬼であり人間ではない。どの道、お前と永くは暮らせまい。だがな……母としての想いは、人間と変わらぬ筈。子の幸せを願うことこそ、母の幸せだ』
記憶の中で、私と母さんは言葉を交わす。
そして、もう二度と会うことが叶わない母を思って、私は涙を流した。
もう戻れない。
けれど、人としての幸せ…それを手にすることが親孝行なら…
私は、人として生きよう。
最初のコメントを投稿しよう!