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鬼女降臨
ー鬼ー
この世の闇より生まれし化物。
「……はぁ」
いつも鏡を眺めて思う。
鏡には、自分のもう一つの姿が映る。
人の姿をしている時は鬼が映り、鬼の姿をしている時は人が映る。
それは決していい事じゃない。
人として生きようと思うなら、自分の正体は知られちゃいけない。
「桃香、何をしている?」
「あ、母さん…。ちょっと考え事してた」
私は桃香。鬼と人との間に産まれし者。
父は人間、そして母が鬼という有り得ない家庭で育った。
「荷物は纏めたか?そろそろ出立するぞ」
「うん」
私達は、同族の鬼から逃れる為に準備を整えていた。
私と母さんは、一族の恥晒しとして…鬼から命を狙われている。
私が18歳になるまで、なんとかこの人間世界で暮らせたものの…もう限界だった。
「あ、母さん。父さんの形見は?」
「無論持っている。さぁ、行くぞ」
父さんは、私が幼い頃にすでに亡くなっていた。
元々病弱だったらしく、母さんもなんとか助けたかったらしいが…出来なかったらしい。
母さんは鬼なのに、どうして人間である父さんと結ばれたのか…
母さん、聞く度に顔を真っ赤にしてモジモジするもんだから聞いたことない。
けれど、理由なんか聞く必要もなく思えるくらい父さんが好きだったことだけは分かる。
そこはちょっと羨ましいと考えちゃうな。
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