ひやく―ある青年の話―

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「うっ、ぐぅ、またっ」  いつもの発作だ。最近は一日に何度か体験することも増えたこの痛み。だけど全然慣れることなんてなくて、今日も自然と胸元を手で押さえる。  もうこの際、口コミがあろうとなかろうと、どうでもよかった。とにかくこの痛みから解放されたい。それしか僕の頭にはなかった。 「今だけ百円か。薬なのに随分と安く買えるんだな」  ダイエットサプリなんかが一時期だけ破格の金額で手に入るなんて広告はよく見るけど、薬でもそういうのがあるんだな。  そうして、僕はその薬を百円で買った。  数日して薬が届くと、「これでやっと楽になれる!」という喜びと期待でいっぱいになり、早速それを飲んだ僕は――。  ――目を開けた先で、十年以上前に亡くなった大嫌いな祖父母に、笑顔で抱きしめられていた。
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