依存な存在

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 テレビでは報道人が現場で起こった出来事を必死に説明していた。内容は昨日の夕方に学生が事故だか事件に巻き込まれたとか。朝の朦朧とする意識の中ではニュースで流れてくる情報は断片的に頭に入ってくるだけで正確に捉えることが出来ない。映し出される光景には事件があった痕跡が残されており、たしかにその場所で何かしらのトラブルがあったのだということが窺えた。        報道されている出来事を遠い世界の事のように思いながら、俺は朝食をとっていた。    朝食を食べ終えると、学校の身支度を整え、暗い気持ちで家を後にし、学校に向かう。重い足取りで通学路を歩き、若干の欝な気分に堪らずため息を吐いてしまった。    学校に着くと、『沢渡 俊』と自分の名前が書かれた下駄箱で靴を履き替え、教室に向かい、いつも通り自分の席に座ると、スマホで音楽を聴きながらホームルームまでの時間を過ごしていた。    しばらくして先生の到着と共にホームルームが開始される。いつも通り先生からの連絡が済むとすぐにホームルームは終わり、教室は生徒たちによる話し声で喧噪に包まれた。他の生徒が友達と話をしたりしている中、俺は一人机に座ったままスマホをいじっていた。    俺の高校では二年の時にクラス替えがある。そのため今年の春からクラスメイトが変ったわけなのだが、俺は未だにクラスに馴染めずにいた。すでに数か月が過ぎているのにも関わらず友達が一人も出来やしない。周りではすでにグループも出来てしまい、尚更友達を作ることは難しい状況になっている。    もともと俺の性格はどちらかと言えば暗めで、積極的に自分から話しかけることが出来ないこともあり、あまり友達は多いほうではない。去年はクラスでも話せる相手は出来たが、それが友達かと聞かれると素直に頷くことは出来ず、さらに今回のクラス替えでそいつらとも別々になった。それ以来連絡は取っていない。そのため、現在は一人でいることを余儀なくされている状態である。    別に一人でいることは慣れているからそれほど困るわけではない。しかし、学校生活において、独り身の者が精神的に追い込まれる場面がある。  例えばそう、授業でペアを作れと言われたときなど――。 「――では、二人一組でペアを作ってください」    とある授業でのこと、唐突に先生から死刑宣告が申しだされた。    まさにこの時、俺は精神的に追い込まれていたと言っても過言ではないだろう。    ――ペアを作る? 一体この人は何を言っているんだ。なぜペアを作らなければいけないのか、明確に教えていただきたいものだ。大体、俺みたいな友達のいない人間に言うべきことではないだろ。もう少しそういったことを考慮した発言をしてほしいものだ。    頭の中では、先生に対する文句が絶えず出てくる。だが、そんなことを思っていても仕方がない。周りの連中はすでにほとんどペアが出来ている。このままでは余りものでいつまでもペアが作れず、みんなから注目を集めてしまうことになるだろう。
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