真夜中に侵入した恐怖

1/5
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 ここは宇宙――にある月の某所。  宇宙人たちのカップルにとって、美しい地球を見ながら会話できるデートスポットとして有名だった。    ある日のこと……  (はる)かに遠い第3惑星から遊びに来た、モザ君とリナというカップルは地球を(なが)めながら談笑していた。  しかし、どうもリナにはイマイチ楽しくなかった。  モザ君は、ジョークを言ったり色々と苦心して頑張っていた。  が……  とうとう喧嘩となり、どなり合う結果となった。  ついに興奮して、両者が乱射したビームガンの光線が、()ざった状態で太陽まで到達した。  太陽の超高熱で変質し増幅したビームは、同時に発生した太陽フレアにより、地球に向けて発射された。    地球に到達した変質ビームは、たまたま夜中だった日本近海――某湾の沖にある佐竹(さたけ)島に届いてしまったのだ。  この佐竹島は、佐竹玄一郎という人間国宝が所有する島だった。  その小さな島の桟橋(さんばし)から伸びた先には、玄一郎が所有する大きな別荘だけが存在していた。  きょう77歳になる彼は、佐竹グループという全国展開中の、大手物流企業の会長でもあった。  モダンな2階建の別荘にいた彼と彼の家族は、全員2階の自室のベッドで熟睡中だった。  宇宙から飛び込んできた変質ビームは、この別荘を直撃したのだった。  午前3時……ドキューン!  奇妙な音が聞こえた気がして、佐竹一族は全員、ふと目を開けた。  が、まだ3時か……ということで、再び就寝した。  その時、それぞれの脳に浸入した変質ビームは、ある感情を増幅させ、そのパワーで脳を破壊してしまう仕組みを作ってしまったのだ。  一見、平穏で温和に思えるこの一族の体内で、想像を絶する恐怖がスタートした。  その時、島の周りの海上は、いつになく穏やかだったのに……。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!