真夜中に侵入した恐怖

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「えっ、実験? まさか……」  冴子は不安そうに言った。  山吹は誠次に向かって、 「あなたは外科医ということだが、(ひど)い手術を何度もしてますよねー!」  すると誠次は山吹に詰め寄り、 「なんだとー! 素人のクセに分かったような事をいうなー!」  その直後、誠次は頭を抱えて苦しみだした。  彼の頭の半分は、見る見る黒くなっていき、ついに倒れて絶命した。  それを見ていた冴子は、ソファーから立ち上がり、 「なんという事を……」  山吹は平然と、今度は和也に向き、 「あなた、会社のカネを使い込んでますよねー。何千万もー!」 「えっ、本当に?」  冴子は思わず和也を見た。 「おい、何を言いだすんだー! そんな証拠が何処にあるー!」  すると和也も、頭を抱えて苦しみ出し、頭の半分が黒く焦げた状態で絶命した。 「あなたって人は……。もーいいでしょう。とっとと帰って……」 「いえいえ、そういう訳にはいきません。だって、いま私がした事をあなた……冴子さん、見てましたよね」 「大丈夫。誰にも言わないから。私、妊娠してるのよ……。ね、分かって……お願い……」  すると山吹は冴子を見詰め、 「あなたは、誠次さんと不倫してましたよねー。そのお腹の子も誠次さんの子でしょうー!」 「なーんて事を言うのよー! ただ一回、ホテルへ行っただけよー!」  まもなく冴子も頭を抱えて苦しみ出し、頭の半分が焦げて絶命した。  山吹はニッコリ笑い、 「これで完了。パーフェクト! 佐竹一族は終りー。さー、これでお開きー」  ソファーか立ってクルッと向きを変えると、別荘の玄関へと向かって歩きだした。  するとその時、冴子のお腹にいた胎児の霊が、冴子の口から抜け出した。  そして、笑顔で別荘から出ようとしている山吹の鼻から入り、脳を(つぶ)したのだ。 「グエーッ! どうして……?」  山吹も、その場に倒れて絶命した。  その夕方、ようやく警察の船が佐竹島に到着し、別荘に訪れた。  が、絶句する彼らを迎えたのは、死体だけだった。  ――終――
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