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わんこじゃなくて狼だって(リカルド)
月が綺麗な夜、部屋の中でチェスターがワンワン泣いていた。
「どうしたのですか、チェスター?」
暗がりにいるチェスターに近づいていくと、彼はチラリとこちらを向く。目をウルウルと潤ませて。
「先生、俺……俺、先生に隠している事があるんだ」
「隠し事?」
なんだろう。拾い食いでもしてお腹を壊したとか、何か物を壊したとか? 彼に限って浮気は考えていないが、もしかして。
小さな事から大きな事まで考えてしまう。ちょっとだけ、嫌な感じに心臓が痛くなった。
「俺……俺ね、実は……」
そう言って暗がりから月明かりの場所まで出てきたチェスターには大きな三角形の耳とフサフサの尻尾がついていた。
「俺、実は狼男なんだ!」
「………………はぁ」
別に、今更驚かない。わんこが狼だったというだけの違いで、大きな違いはないように思う。普段からあまり変わっていない。
「え! 先生驚かないの!」
「だって貴方、普段もわんこじゃありませんか」
「先生酷い!」
ブワッと尻尾を大きくしたチェスターだったが、次にはもう少し近づいてくる。そっと近づいてくるのは、怖がらせない為とか思っているのだろうか。
「怖くない?」
「貴方は貴方でしょ、何が怖いのですか?」
何の問題もないがとりあえずその耳と尻尾をもふらせてほしい。
欲望から、手がわきわきしている。それを見るチェスターの方が逃げ気味だ。
「先生、その手」
「とりあえずもふらせなさい」
「え!」
「いいから、おいで」
そう言うと、チェスターはおずおずと近づいてきて、リカルドに連れられてベッドの上に乗り上げた。
膝枕をしている頭をゆっくり撫でると、耳がピクピクと動く。ちょっとだけ、獣くさいかもしれない。でも嫌いな匂いではない。昔から動物は好きだ。
「先生、耳気持ちいいよ」
「わかっていますよ」
耳の根元をマッサージする様に優しく揉むと、明らかに体がだらんとしてくる。リラックスしているのが分かって、リカルドは優しく微笑んだ。
「チェスター、可愛いですね」
「ふわぁぁ」
嬉しそうに狼尻尾がぱたぱたしている。犬は嬉しいと尻尾を振る。それが可愛いと思える。
その尻尾を丁寧に撫でると、流石に気になるのかチェスターが振り向く。猫も言えるが、犬も尻尾はあまり触られたくないものだ。
「尻尾落ち着かないよ」
「そうですか? では、どこを撫でられたいですか?」
「……お腹」
ゴロンと横になるチェスターのお腹をさすさすすると、緊張しながらも受け入れてくれる。犬はココが弱点になるから、ここを触らせてくれるのは信頼の証だ。
「可愛いですね、チェスター」
「俺、カッコいいって言われたい」
「ふふっ、そうですか?」
本当にバカな子。勿論、カッコいいのは知っている。仕事中の彼は笑顔も見せるが凜々しくもある。いっそ別人かと思う瞬間があるくらいだ。
そんな所が可愛くて、格好よくて、ドキドキするんだ。
「んっ、先生なんか、違う意味で気持ち良くなってきた」
トロンと甘え顔をするチェスターが腕を伸ばしてくる。応じて身を屈めてキスをすると、するっと舌が滑り混んで絡まってくる。いつもよりも甘えて吸い付くのが可愛い。
唇が離れる頃には、リカルドもすっかり気持ち良くなっていた。
「先生、したい。ダメかな?」
「私がダメって、言うと思いますか?」
ちょっと赤くなったチェスターは、それでも嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
互いに着ている物を脱ぎ、ベッドに転がっている。仰向けになっているリカルドの上に陣取ったチェスターは、いつもより少し積極的な気がする。
甘える様に首筋や鎖骨の辺りを甘噛みするのはくすぐったくて、少しだけ痛い。犬歯が太くなっているのか、ほんのりと歯形が付くのだ。
「あまり強く噛まないで下さいね」
この犬歯で噛みつかれたら流石に痛いし、流血沙汰になるかもしれない。
けれどこれは甘えている行為でもあるから、愛おしく思えてあまり強く止めたりもできないでいる。
「ごめん、痛いよね」
「平気ですよ」
よしよしと頭を撫で、耳の根元を揉む。するとトロンと蕩けて余計にはむはむと甘噛みを始めてしまう。犬に近いのだろうか。
それでも彼の前はしっかりと大きく育っていて、太股に当たっている。それを感じるだけで、リカルドも興奮してしまうのだ。
「チェスター、もう……」
「……うん」
チェスターはリカルドを四つん這いにして、後孔を解し始める。入念に指でされていたが、不意にぺちゃりと濡れた感触がしてピクリと震えた。
「え? ちょっと!」
「どうしたの、リカルド?」
「それ、舌……っ」
再びぴちゃりと濡れた肉の感触が窄まりを濡らし、クリクリッと突く。細くした先端が中に触れている気がする。
「ダメです! 汚い」
「汚くないよ?」
「ダメですよ!」
病気になる!
でも今日のチェスターはリカルドの強い拒絶でも止まる気がないらしい。肉感的なものが狭い部分を濡らしていくのは、想像以上に恥ずかしい。
「先生、柔らかくなってきた。もう、貰ってもいい?」
聞く意味はあるのだろうか。ここまで受け入れて、尻に興奮しきった吐息を感じて、これで「ダメ」と言って彼は止まるのだろうか。
「いいですから、もうきてっ」
後ろを振り向き潤んだ瞳で見つめるリカルドに、チェスターは逆らう術はなかった。
腰を固定するように支え、濡らされた後孔へと硬いものが当たる。それがゆっくりと中へと押し入ってくるのは、やはり苦しい。それでも大分痛みは感じなくなった。チェスターが毎度、丁寧に解してくれるおかげかもしれない。恥ずかしい言葉で言えば、『彼の形を覚えた』ということだろう。
それでも今日はちょっと大きい気がする。ゆっくりと全てを埋めた彼の逸物を咥え込んだ部分が、一杯に広がっている。
「リカルド、熱い……」
「私も熱い、です」
「動いても、平気?」
「はい」
ズズッと抜けて行くときにはゾクゾクする。それが強く押し入ると今度は苦しいのと一緒に突き抜けるような快楽がある。奥が気持ち良くて、そこを突かれると声を抑えられない。枕に顔を埋めて、それでも小さく声と息が漏れる。
「先生、すごい。俺、気持ちいい」
「私も、あっ! チェスターそこ!」
好きな場所に当たって腰骨が痺れる。力が入らなくなって崩れてしまいそうだ。
今日のチェスターは情熱的で、抽挿がとても力強い。それが全部奥のいい場所に当たるから、クラクラする。気持ち良さそうな声が後ろでして、その声を聞くと嬉しくなって中を締め上げてしまう。
「うっ、リカルド締めたら俺、出そうっ」
「いい、ですよっ、はぁ……私も、もう……」
腹の中が気持ち良くて熱くて脈打っている。吸い上げるように締め上げると、チェスターが切なげに声を上げる。この声が好きだ。
前に回った手がリカルドの昂ぶりを握り込み、扱き上げる。途端に高まった射精感に後孔が締まって、リカルドはビンッと背をしならせて達した。
が、異変はその直後に起こっていた。
「へぁ! え? うっ、苦しいっ」
チェスターの動きが緩慢になったかと思うと、そのままたっぷりと中に吐き出される。それは知っている感覚と違っている。しかも、入口の辺りが拡張されてしまって苦しい。
「ごめ、先生。俺……狼だからっ」
「狼……え!!」
イヌ科の狼は確実にメスを孕ませる為、射精時には根元にコブが出来る。メスを逃がさない為と、注いだ精液が外に漏れないようにだ。しかもその射精は長く、三十分ほど続く事もあるとか。
「あっ、そんな……くっ、るしぃ……あぁ!」
断続的に注がれる子種が腹に溜まっていく。しかも萎えないまま最奥に出されているのだ。更に抜けないのに、そのまま腰を振るから振動がすごい。たぷたぷの腹を下から拳で殴られているような。
「ごめん先生、止まんないっ」
「お願いですから腰振るのは止めてください!」
重怠くなってくる腰を支えられたまま、リカルドは長すぎる時間チェスターを受け入れ続けるのだった。
=====
目が覚めて、こんなに罪悪感のある朝はない。
一人のベッドで目覚めたリカルドは、顔を真っ赤にして頭を抱えて悶えていた。
よりにもよって犬交尾だなんて、いくら相手がわんこでもダメだろ。
……それにしても、可愛かった。あんな風に求められ、上目遣いにされたらないはずの母性と性欲が混ざって大変な事になりそうだ。
「……顔洗いましょうか」
昨日は他の隊員と一緒に年末パーティーを楽しんだだろうチェスターと、今日はデートの予定だ。
……それにしても、今日は彼と顔をあわせられるのだろうか?
僅かな不安のあるリカルドだった。
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