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淫魔は神父に勝てはしない(チェルル)
腹を空かせた淫魔が一匹、フラフラしながら今日の獲物を探していた。
「もうダメ、お腹空きすぎてぼーっとする。誰でもいいからご飯ほし~」
そんな時、一つの屋敷を見つけた淫魔チェルルは鼻先をくんくんさせた。とても美味しそうな匂いがしたのだ。
今日はここに決めた! そうして降りて行き、寝室の窓から中を覗き込むとそこには一人の男性が気持ちよく眠っている様子だった。
「男か……俺、インキュバスなんだよなぁ」
普通男の淫魔、インキュバスは女性をターゲットにする事が多い。精を吸い取り、時には悪魔の子を孕ませる為だ。
ただ、男からだって精を取り込む事はできる。何よりチェルルは腹ぺこで、この獲物はとてもいい匂いがするのだ。
「も~、我慢できない! 今日はこいつで食事だ!」
窓から侵入したチェルルは音も無くベッドへと乗る。そして男をマジマジと見た。
柔らかい栗色の髪に、整った顔立ちをした彼は気持ち良さそうに眠っている。色が白くて。
「綺麗な人だな……」
人間でもたまに、目を惹くような綺麗な人がいる。この人は間違いなくそういう感じだ。
ぐぅぅぅぅっ
切ない腹の虫が大音響で鳴った。
「うぅ、腹減ったぁ。では、頂きます!」
布団の中に潜り込んだチェルルはそのまま下半身まで降りて行き、ズボンの紐を解く。そうして取り出した男のそれは、まだ柔らかく普通サイズだ。
「よしよし、育ててやるからね」
まだ柔らかいそれを手に持ち、小さな口で咥える。唾液を絡めながら上下させると少しずつ育っていく。歯を引っかけないように上顎に先端を擦りつけたり、深く咥えて口全部で吸い上げてみたり。反応は上々だ。
それにしても、とても美味しい。こんなに美味しいご飯初めてかもしれない。瑞々しくて力に溢れていて、それでいて淫靡。
「んぅ……なんか、お尻の奥が熱くなりそう……」
一応アナルセックスも十分できるようにはなっている。そこが女性とまではいかなくても濡れていくのだ。それに、柔らかくなっている。
じゅぶじゅぶと音を立てながら舐めしゃぶっているチェルルの口の中で、男のそれは十分に育った。
口から取り出したそれは唾液濡れでテラテラしている。だが、硬さも大きさも十分だ。
「ふふっ、美味しそうになったなー。さーて、ではメイン……」
「そんなに一生懸命しゃぶって、僕のは美味しかった?」
「え?」と思う間もなく視界がひっくり返る。天井が映り、同時に襲っていたはずの男の顔が見えた。
綺麗な青い瞳が月明かりに神秘的に見える。サラリと揺れた栗色の髪。整った顔立ち。その人が、とてもいい笑顔で唇に指を当て、何か呪文を唱えてチェルルの手首に触れる。途端、枷を嵌められたように上で一括りにされ、更にベッドヘットに繋がれてしまった。
「なーんか可愛いのが来たなって思ったんだけど、君可愛いね。ついつい泳がせてしまったよ」
「あっ、なん、で? 普通目なんて覚めないし! それにこれ、なに!」
「あれ、結構お間抜けさんなんだね。僕は神父なんだよ。しかも、悪魔払いの」
「し!!」
神父だってぇぇぇ!
悪魔にとって神父はとても怖い。これがとても強い悪魔なら戦えるけれど、チェルルは所詮淫魔。人に夢を見せて快楽を与えて精を食らう小悪魔だ。そんなの、悪魔払い専門の神父に勝てる訳がない。
ジワッと涙の膜が張った。こんな所で死ぬんだと思ったら溜まらなく悲しくなっている。
けれど神父はそんなチェルルを見て、ちょっと驚いたようだった。
「あっ、泣くなんて卑怯だよ」
「だ……俺、死んじゃうのヤダぁ」
手がまったく動かない。無理に動かそうとしたらとても痛い。この神父、とても強い力を持っているんだ。
「もぉ、泣かないんだよ」
「ひゃ!」
困ったように笑った神父が、唇を寄せて涙を吸う。そのくすぐったい感覚に驚いたチェルルは涙も引っ込んで、マジマジと神父を見た。
「誰も殺すなんて言ってないでしょ? 僕、ちょっと変わり者でさ。君が僕の使い魔になるっていうなら、毎日美味しいご飯あげてもいいよ」
「使い、魔?」
「名前を教えて、契約するの。僕の求めには絶対服従だけど、その対価として精をあげる。美味しかったんでしょ? とても一生懸命しゃぶってたもんね」
つまり契約……しかもこの神父に都合のいい契約になるに違いない。そんなの悪魔のプライドに響く。仲間達に一生バカにされる!
何より上司のアルブレヒト(ルシフェル)にどんな顔をしていいか分からない。
怯えながらも首を横に振るチェルルを見て、神父はニッコリと微笑んだ。
「案外頑張るね。でも、だーめ。僕、君がけっこう気に入ったみたいなんだ。絶対その口から名前を言わせてみせるからね」
にっこり笑顔がいっそ、怖いと思いました。
胸元を隠すだけの黒い服、膝より少し上の黒い半ズボン。引き締まったお腹が丸見え状態の服はチェルルのお気に入り。ショタ系淫魔は好む人が多いスタイルだが、これが今回あだとなった。
「可愛いお臍だね」
「やぅ! ひゃ! くすぐったい!」
ペロペロと臍の周りを舐められるぞ、ビクビクと腹筋の辺りが引きつる。くすぐったいはずなのに、何度も執拗にされているうちに変な気分になってくる。ゾクゾクするような、落ち着かないような。
「流石淫魔、慣れない刺激でも簡単に快楽に結びつけるね」
「あっ、やぁ……」
そんな淫乱みたいな事を言われると心外だ。淫魔だけど。
男の手が服のボタンを外し。わざとなのかゆっくりと外されて、ジワジワと羞恥心を煽られる。心臓がドキドキしている。
「可愛いね」
「あ……」
はだけられた胸元。そこを男の手が撫でていく。まだ主張していない乳首がほんの少し擦れて、それがちょっとソワソワする。気持ちよくなる。
「ここ、舐めてあげようね」
ニッコリ笑った男は、チェルルなんかよりも余程恐ろしい悪魔に違いない。
濡れて熱い舌が乳首を捏ねるように舐め、咥えて吸い上げる。それだけでチェルルは気持ちよくて声が抑えられない。腰の辺りが重く痺れて、ズボンの中で後孔が濡れてグズグズになってくる。
「あっ、あっ、やっ! 噛んじゃやだ!」
軽く噛みついて引っ張られるとイタ気持ちいい。そこを優しく舐められるとゾクゾクして仰け反ってしまう。頭の中がぼんやり霞がかってきて、全力疾走してるみたいにハァハァと息をしている。
「でも、好きなんじゃないの? トロンと可愛い顔になってるよ」
「やっ、だめだよ神父ぅ……俺、これダメだってぇ」
「涙目でそんな事を言うと、もっとしちゃうよ?」
男がチェルルのズボンを簡単に脱がせてしまう。途端、濡れ濡れの後孔まで丸見えで恥ずかしくてたまらない気持ちになった。
「うわぁ、すごいお漏らしだね。それに君、インキュバスのわりにおちんちん小さいね」
「うぅ、それ気にしてるのに……」
意地悪な奴に時々「チェルルちゃんはサキュバスでもいいんじゃない?」なんて言われる。ちゃんとついてるのに、酷い。
「可愛いけれどね。小さくてもここ、ちゃんと反応して勃ちあがってるし」
「ひゃん!」
気にしている部分に触れられ、更に咥えられる。びっくりして、でもとても気持ちよくて頭の中は真っ白だ。いやらしい音がして、それにも興奮してしまう。
ダメだ、俺このままこの人の雌にされる。
ドキドキした気持ちの中に、もう抵抗という言葉がない。ただ気持ちよくてたまらなくて、一緒に与えられる精が美味しくてたまらない。美味しい食事ができて、こんなに気持ちよく可愛がってもらえるならもう、プライドとかいい気がしてくる。
「ひもひいい? おひんひん、ひくひくしへるひょ」
「咥えたまま喋らないでよぉ……っ」
くすぐったいし、変な所に不意打ちで舌が当たってたまらないから。
「じゃあ、そろそろ聞いてみようかな。君の名前は何? 教えてくれたら気持ちよくて、美味しい食事をさせてあげる」
優しい笑顔。これって、悪魔の誘惑だ。悪魔を誘惑する人間なんていないと思う。だからこの人はきっと、とても質の悪い悪魔なんだ。
「ねぇ」
「チェルル」
名を口にしたら、彼はとても嬉しそうに笑う。そしてまた唇に指を当てて何か呪文の様なものを唱えて、首筋に触れた。
途端、首に何かがまきついた。黒い鈴のついたチョーカーは格好と相まってオシャレになっている。でもこれが、契約の証なんだ。
「可愛い名前だね、チェルル。僕の名前はハムレット。君の大事なご主人様の名前だよ。覚えて、呼んでね」
「ハムレット……」
呼んだだけでゾクゾクする。なんだかとても嬉しくて、心が震えてくる。温かいものが胸の中に広がってきて、幸せな気持ちが溢れてくる。
「さて、チェルル。約束のご褒美だよ」
濡れに濡れた後孔に指が二本入って、くちくちと広げてくる。そして浅い部分を押してきた。
「やっ、あっ、あぁ!」
「ここ、気持ちいいね。濡れて、締めつけてくる」
「ひゃ! あぁん! やっ、そこダメ!」
それでなくても白くなっている思考が一気に弾けそう。何も考えられずに気持ちいい事だけを求めて、チェルルは自ら腰を振っている。ハート型の尻尾がビクビク震えている。
「そういえば、淫魔の尻尾ってあまり見せない性感帯なんだっけ。僕も見たの初めてだ」
「あっ! やぁぁ!」
気持ちよさに出てしまった尻尾を捉まえたハムレットが、ハート型の先端をペロリと舐める。瞬間、ビリビリした快楽が尾てい骨から頭の天辺、腹の中まで全部を痺れさせる。気付いたら腹の上がベタベタに汚れて、頬にまでかかっていた。
「うわぁ、すごいね」
「ひ……どいよぉ。そこ、ダメなのに……ぅ」
「ごめんね、可愛くてつい。こんなに気持ち良い場所なんだ。これは弱点だね」
「もっ、触らないでぇ。気持ちよすぎて痛いよぉ」
ポロポロ涙がこぼれてくる。それくらい気持ちよくて痛くて、触って欲しいけれどつらいんだ。
ハムレットはとても優しく手を離して、イッたことでドロドロのグチャグチャになっている後孔へと自身の昂ぶりを押し当てた。
「じゃあ、ご褒美のご飯ね。たっぷり奥で味わうんだよ」
「あっ! はぁぁん!」
抵抗なんてない、淫魔だから。こんな場所でも感じられる。そもそも食物を摂取しないんだから、この孔の使いようはこれくらいだ。
ハムレットの肉剣は熱くて、狭い器官を一杯に埋めてくれる。押し入れられる切っ先が奥をコツコツとノックする度、ゾクゾクした痺れが下半身から全部に広がっていく。
「いいよ、チェルル。上手におしゃぶりするね」
鋭さと艶っぽさを混ぜた青い瞳がチェルルを覗き込み、当然みたいにキスをくれる。淫魔にキスする人間なんて、そうそういない。下手をすると精気を吸い取られるから。
でもチェルルはキスが好きだ。ハムレットのくれる、チロチロと舌を吸って絡ませるようなキスは気持ちよくて、甘やかしてもらってるみたいで嬉しい。
「キス、好きなんだね。キュゥって締まる」
「んっ、好きぃ」
「じゃあ、キスしながら出してあげる。可愛い僕の小悪魔くん、存分に味わうんだよ」
突然手が自由になって、チェルルはハムレットの背に手を回して抱きついた。揺さぶられるような激しい腰使い。その最奥をこじ開けるように突き入れられた瞬間、深い部分に甘い蜜のような精液が吐き出された。
「あ、あ……おい、しぃ……」
「っ! いいよ、存分に味わって」
キスをして、舌を絡めて、小さく吸いながらチェルルも達した。とても幸せな時間だ。
「ハムレット……神父、様……」
「甘えん坊なんだね、チェルル。でも、僕はまだ満足していないんだよ」
「……え?」
体中ドロドロでもうチェルル的にはお終い。けれどハムレットはまったく満足していない。それどころか深い部分でまた硬く、大きくしている。
……えぇ!!
「さて、奥も開いた事だしもっとあげるね。沢山飲むんだよ」
「もっ、もぉ無理だよぉぉ!!」
淫魔チェルルの悲鳴が室内に木霊する。首筋に顔を埋めたハムレットが、その首筋を強く噛んだ。
=====
「! いたぁ!!」
「あー、だよねぇ」
「ぎゃあ! 神父様!」
「え?」
こちらを見下ろしているハムレットと夢の神父が丸被りで、チェルルは思わず悲鳴をあげた。このままじゃヤリ殺されて食われる!
けれどびっくり顔のハムレットは何のことだか分からないようだ。それに、手も縛られていない。首だけが少し痛かった。
でもおかげで夢から覚めた。チェルルはドキドキしている胸を押さえて息をついた。
「よ……よかったぁ、先生だぁ」
「どうしたの?」
「え! あぁ、うん、何でもない!」
言ったら同じ事したいとか言い出しそう。手首縛って散々に鳴かされて、抜かずの何連発なんて流石に気持ちよすぎておかしくなる。
けれどハムレットはなんだか納得していない顔をしている。この顔、ちょっと怖い。だって何かよからぬ事を考えている時の顔なんだから。
なんだか楽しそうな顔をしているハムレットが怖い、チェルルなのだった。
END
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