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ピンクとブルー、お揃いのデキャンタに注がれてるのは、けいちゃんは透明感のあるロゼのワイン、あたしはマスカットのサイダー。 「けいちゃん」 「千帆」 名前を呼び合ってから、あたし達はグラスをごちそうの並んだテーブルの上に上げる。 「お誕生日おめでとう」 「結婚1周年おめでとう」 言い合ってから、カチっ…とグラス同士を重ねてから、一口ずつ食前酒(ジュース)を飲んで、今度はテーブル越しに唇を重ね合った。 3月22日。今日はあたしたちにとって、特別な日――。けいちゃんのお誕生日でもあって、あたしとけいちゃんが入籍した日でもある――。 先生と生徒だったあたしとけいちゃんが、旦那様と妻になって1年――。めまぐるしい日々は、勿論いいことずくめなわけはなくて、ケンカしちゃったり、けいちゃんに本気モードで怒られたり、いろいろあったけれど。 「けいちゃん、あたしと結婚して良かった…って思ってる?」 「もちろん思ってるよ。千帆は? ――あの人、けいちゃんよりカッコいい、なんて毎日大学で品定めしてたりしないの?」 「いないよ、けいちゃんよりカッコいい人なんてっ」 けいちゃんの軽口に、あたしは本気モードで乗っかってしまった。 「あーそう…」 けいちゃんは照れたのか、気のない相槌を打ってから、ぐいとロゼのワインを飲み干す。 「けいちゃんの方こそ、毎日女子高生に囲まれてるくせに」 「過半数が男子です」 「半数近くは女子じゃん」 「…そんなの地球上の男女比だっておんなじじゃん」 ついに地球レベルに話が行ってしまった。早々に軌道修正しないと。今日はけいちゃんの結婚記念日&入籍記念日なのに~。 「え、っと…だからね?」 「うん」 「あたしはけいちゃんと結婚して、毎日幸せだけど、けいちゃんはどうなのかな…て、気になっちゃったの…」 テーブルの向かいの席のけいちゃんの目が、ゆっくり細められる。今日で24才になったけいちゃんは、そういう顔すると、すっごくおとなびて見える…。 甘い笑顔に見惚れてたら、けいちゃんのおっきな手が、あたしの頭に伸びてきた。くしゃっとてっぺんを撫でてから言った。 「俺も千帆と結婚して幸せだよ」 まだ18と23で、しかもこの間まで先生と生徒で。常識外のあたしたちだけど、相変わらず、幸せにばかっぷるやってます――。
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