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「で、決まったの? 指輪」
「ううん、まだ。明日見に行く」
この手で行ったら、指輪も映えそうだなあ。
「なんかさ、あんたのとこは遠藤ちゃんのがマリッジブルーっぽいよね」
持ってきた用具をしまいながら、七海が呟く。
『マリッジブルー』
よく聞くけれど、自分には縁のない言葉だと思ってたその一言が、胸に刺さった。
「ええっ、けいちゃん、あたしとの結婚取りやめたい、って思ってるのかな」
今更、けいちゃんにポンって捨てられたら、あたし、どうすればいいんだろ。
のこのこ実家に帰ればいいのかな。
あ、でもここもうちのお父さんの持ち家だっけ。じゃ、結婚生活破綻の折には、出てくのはけいちゃんってこと?
「…い、いや、そんなことは思ってないと思うけど」
七海はあたしの想像が突飛だと苦笑いする。
「そんな極端なものじゃなくってさあ、もっと小さいものなんじゃないかなあ。上手く行かなかったり、思うようにならないことの不満とか不安が、ちょっとずつ溜まって、ストレスになっていく感じ? 結婚式をああしたい、こうしたいって、願望はちぃより遠藤ちゃんの方がありそうだからなあ」
「そうかも…」
あたしはぶっちゃけ、けいちゃんといられれば幸せで。けいちゃんと結婚式なんて夢みたいで。
でも、けいちゃんにはずっと現実として伸し掛かってたのかもしれない。
お料理決める時も、招待状の文面考える時も、あたし全部「けいちゃんが決めていいよ」ばっかり。けいちゃんに任せっぱなしで、頼りきってた。
あたし達の結婚式なのに。
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