第二章 彷徨う魂

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 愛されることにめまいを覚えるなんて、初めてだろう。長いキスのあと、血で汚れてしまったルカのヘンリーネックを、タカシが子供の着替えを手伝うかのように、脱がせてくれた。 「痛っ……」 「…当たり前でしょ。自分でつけた勲章だ」 鼻の上の傷が衣服で擦れ、ルカは思わず声をあげた。 「もう…ルカのこと、今までどれくらい抱いたのか忘れちゃったよ…」 「……そんなの、数えていたんですか?」 「……途中までは、なんとなく」 「もう!……やめて下さいよ、恥ずかしいから…」  耳元でそんな冗談を囁くタカシを、ルカは微笑んで目で追った。その先にある、恥ずかしがりやの彼の瞳。涼やかで、優しくて…。 あなたが、大好きです、タカシさん……。 「……ルカ、もう待てないんだけど」 「………。」 返事をする代わりに、ルカはタカシの首に手をまわした。交わりながら、自分が自分でなくなっていく、あの不思議な感覚を味わう。 「………オレのかわいい人。傷まで作ってその可愛い顔を台無しにしようとするなんて……」  タカシは高揚する感覚を抑えるようにして、ルカの前髪をそっと分けてやった。 「……あなたを……すごく今は感じたいんです、タカシさん……」  それ以上は余計なことは言いたくなかった。彼の望みどおり、タカシはルカを愛し続けた。彼が乱れて、時折甘い声をあげると、タカシは我が事のように綺麗な微笑を浮かべた。衣擦れの音、ベッドの軋み、甘い吐息、背中に浮かんだ無数の汗の粒。求め合えば求め合うほど、離れるのが怖くなる………。  やがて最奥で欲望が解放され、二人は肌を合わせたまま、互いをみつめあった。このときが、どうか永遠であって欲しい。そんなふうに願わずにはいられない。
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