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愛されることにめまいを覚えるなんて、初めてだろう。長いキスのあと、血で汚れてしまったルカのヘンリーネックを、タカシが子供の着替えを手伝うかのように、脱がせてくれた。
「痛っ……」
「…当たり前でしょ。自分でつけた勲章だ」
鼻の上の傷が衣服で擦れ、ルカは思わず声をあげた。
「もう…ルカのこと、今までどれくらい抱いたのか忘れちゃったよ…」
「……そんなの、数えていたんですか?」
「……途中までは、なんとなく」
「もう!……やめて下さいよ、恥ずかしいから…」
耳元でそんな冗談を囁くタカシを、ルカは微笑んで目で追った。その先にある、恥ずかしがりやの彼の瞳。涼やかで、優しくて…。
あなたが、大好きです、タカシさん……。
「……ルカ、もう待てないんだけど」
「………。」
返事をする代わりに、ルカはタカシの首に手をまわした。交わりながら、自分が自分でなくなっていく、あの不思議な感覚を味わう。
「………オレのかわいい人。傷まで作ってその可愛い顔を台無しにしようとするなんて……」
タカシは高揚する感覚を抑えるようにして、ルカの前髪をそっと分けてやった。
「……あなたを……すごく今は感じたいんです、タカシさん……」
それ以上は余計なことは言いたくなかった。彼の望みどおり、タカシはルカを愛し続けた。彼が乱れて、時折甘い声をあげると、タカシは我が事のように綺麗な微笑を浮かべた。衣擦れの音、ベッドの軋み、甘い吐息、背中に浮かんだ無数の汗の粒。求め合えば求め合うほど、離れるのが怖くなる………。
やがて最奥で欲望が解放され、二人は肌を合わせたまま、互いをみつめあった。このときが、どうか永遠であって欲しい。そんなふうに願わずにはいられない。
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