第二章 彷徨う魂

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 数週間後、ジョン・F・ケネディ空港のロビーで、ルカはキャリングカーを手にして立っていた。成田への直行便でここから日本へ戻る予定だった。気の早いニューヨーカーたちは、ところどころにクリスマスのオーナメントを意識している。そういえば、もうすぐ12月なのだ…。  タカシはアパートを引き払った。気の早い大家は、二人が出て行くことが判るや否や、すぐにアパートのエントランスに『FOR RENT』の看板を掲げていたため、借り手がすぐに見つかった。 「病院にちょっと寄ってから、空港で待ち合わせをしましょう」 「了解、ハニー」  玄関でキスを交わして、ルカはタカシと一旦別れた。そのタカシを今、空港ロビーで彼は待っていたのだ。場内アナウンスが流れ、発着便と時間を表す掲示板が刻一刻と変わっていく。………搭乗時間まであとわずか。成田行きのチケットは、タカシも持っている。いざとなれば、きっと間に合うはずなのだ。「一緒に日本へ帰ろう…」  自分を腕に抱きながら、そういったタカシ。ルカはその言葉を、信じている。だが、せまりくる刻限に、ルカは次第に焦りを感じ始めていた。
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