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「…なぁ佐屋、ヤマダさん、今日も閉店コースかな?」
「さぁ?でも、そうかもね。ヤマダさん、マスターがお気に入りだし」
佐屋はそのまま、店の片隅に置かれたこれもまた年代物のグランドピアノの前に座った。
「…ヤマダさん、リクエストあれば、どうぞ…」
佐屋がいつものようにニコリと愛想よく笑う。
「佐屋、ハービー・ハンコックなら何だっていいってさ…」
タカシは出来上がりつつあるヤマダの代わりに佐屋にそう指示した。カウンターに座り、ヤマダはグダグダだった。よほど仕事で嫌なことでもあったのだろう。
「タカシ先~輩、仕事に誇りを持つって、大変ですよねー?そーでしょー?ねー、せんぱーい」
「…毎度のことながら、酒癖よくないねぇ…ヤマダ。生真面目なやつほど酒に溺れちゃうんだよね、やれやれ…」
眠そうな顔でタカシはヤマダの肩をポンポンと叩いてコースタの上に水割りを置いてやった。
「先輩…今日ですね、決まりそうだった仕事がねぇ…ヒック!……競合のライバル会社に取られちゃった…ヒック!」
シャックリのせいで思うように話せないヤマダの眼は既にすわっていた。
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