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オーダーをとった鳴海がタカシに叫んだ。
「へいへい…。そんなにデッカイ声で言わなくても、聞こえてますとも…」
タカシはさっそくシェイカーを格好よく振る。昔、一流ホテルのショットバーで人気バーテンだった…という噂は、もしかしたら嘘ではないのかもしれない。なかなかその姿がキマっている。
「なーんか、スカしたふりしてカッコマンだって」
鳴海がへばりつくような目で見ている様子を横で感じ、佐屋はピアノを弾きながら笑っていた。
佐屋がストリングスをパッセージしはじめた頃、また扉のドアが軋みながら開く音がした。
「はぁい!いらっしゃい……」
眠そうな目で入り口ドアを見たタカシだったが…思わずシェイカーを振る手が止まってしまった。シャカシャカと今まで軽快な音がリズムを刻んでいたのがピタリと止むと、鳴海も、佐屋も、悪酔いしつつあるヤマダも、テーブルの一隅で愛を語るアズマとクレハも、一斉に何事が起きたのかと、タカシに視線を向け、そのあと入り口にその視線を移した。
「………やっと、見つけた!」
入り口に立ったその男は、顔に傷があり、温厚そうな、笑顔でいる。
「……ルカ」
明らかに、その一言を発したタカシの表情には、動揺が見られた。洞察力の鋭い佐屋は、一番近くでそれを見ていて逃さなかった。
「……タカシさん。捜しました。今日、ルフトハンザで成田に着きました」
「…マスター、この人、誰だ?」
尋常じゃない空気のなかで、鳴海が痺れを切らしてタカシに訊ねた。
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