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「…三年前、ニューヨークでオレが左目を失明しかけた時、治してくれた、大学病院の先生なんだ…」
なるほど、事故か何かでちょうどタカシの顔面の左側、左目にかかるようにざっくりと傷痕がある。さすがに思ったことをいつもハッキリいわずにはいられない鳴海でさえ、この雰囲気と空気を読み取り、タカシに冗談でツッコみを入れるようなことはなかった。
「…初めまして。山口瑠歌と申します。わけあって、今、ドイツに住んでいます。三年前に、タカシさんと知り合って…それで…」
「なーんだ!本当にルカっていうのか!!」
鳴海がそういうと、佐屋は肘で鳴海を突いて小声で彼に囁いた。
「…たぶん、あだ名も兼ねていると思うよ、鳴海?“ルカ”ってカトリックに出てくる、医者のセイントだから…」
…あだ名で呼び合うぐらい、マスターにとって、この人は特別だったんだ…。(いや、それにしてもそんな雑学を知ってる佐屋って本当にタダモノじゃない)
さっきの動揺ぶりから、佐屋はタカシとルカの関係に何かあったことを感じていた。
「……随分、捜しましたよ、タカシさん。どうしてあの日、空港に来てくれなかったんですか?」
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