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ルカは悲しげな顔をしていた。店内にいた、タカシ以外の人間は、こそこそと気を遣いながら、二人から少し離れた位置で自然と見守る。ただし、カウンターで酔いつぶれたヤマダは意識があるのだか、無いのだか、よく判らない。「……ドイツになんて、オレは行けないからさ」
「何故です?あっちで一緒に幸せに暮らせたらいい…お互いにそうするはずだったじゃないですか?」
「ルカ…オレはお前の足を引っ張りたくはなかったんだよ。ドイツの大学病院に客員教授として招かれたお前に、オレが付いて行くことなど、ありえないだろう?」
「…そんなの、ナンセンスです、タカシさん。言ったはずですよ?オレは…あなたが必要だと!あの日、搭乗時刻ぎりぎりまで、あなたのことを待っていたんです!」
…もしかして?ルカ先生って、マスターの昔の恋人???
ルカのひとことで、皆の耳アンテナの感度が、一瞬で良くなったようだ。それをすぐに察したタカシは鳴海にマスター命令を下す。
「鳴海!お客がきたら今日は満員だって、断っておいて!それと…今日は11時閉店だから!皆さんちょっと、外、出てくるから。ここじゃパラボラアンテナ並みのお耳がやたら多いからな…」
タカシの嫌味に一同が苦笑いを隠せない。
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