第四章 Bar Lucas

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「そう?オレは覚えてるよ。“あなたが顔の傷がどうこうってこだわるなら、オレも傷の一つや二つ、どうってことないです。あなたを失って、心がズタズタになるよりはよっぽどマシですから”………だったかな?愛の告白にしては、過激じゃない?」  「…やめてくださいよ、恥ずかしいですから」 「あの後、病院で形成の先生にキレイに治してやるから…って追い掛け回されていたって聞いたよ?なのに、未だに治してないなんて…。ルカはどれだけおバカさんな医者なのかねぇ…?」 「…顔の傷なんて、眼科医の仕事のジャマになんてならないですから。全然平気ですよ…」   時間を感じさせないゆったりとした、大人の二人だった。一緒にいることがいつも自然で、かけがえのなかった日々がここで蘇る。  「…だからだな。オレ、ルカのこと、忘れたくても、ずっとここン中にあって…」   トントン、と指で自分の胸を叩き、タカシは苦笑した。  「いつの間にか、自分より大切な存在になっちゃった…」  「…タカシさん、相変わらずズルイです。そうやって、オレが嬉しくなるようなことをたくさん言ってくれるのに、抱きしめるとすり抜けてしまう、あなたって人は…」  「…アンタの出世にはオレは邪魔なだけだよ、ルカ」
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