369人が本棚に入れています
本棚に追加
/123ページ
「オレ、タカシさんが出世の邪魔だなんていつ言いました?」
「…お前はそんなこと、死んでも言わないよ。でも、あのとき大学病院の教授から結婚話をもらっていたのを隠してただろう?」
「…言わなかったのは、あの見合い話、最初から断るつもりでしたから。オレにはタカシさん以外の人間と恋愛なんて…想像すらできないから」
「だから負け組なんだよ、ルカは!オレみたいな根無し草のどこがイイんだか?」
「…全部です。いけませんか?そういう言い方は」
ルカがタカシの顔を覗きこむと、彼の顔もルカに近づいた。そのままゆっくりと唇が合わさって…キスはほろ苦い、カフェの味だった。
***********
離れて止まっていた時を埋めるように、タカシはルカの服を乱暴に剥いだ。抑えきれなくなった情熱は、冷ます術が見つからなかった。
男ってのはいつまでたってもガキだ…。
そんなふうに苦笑いをして、ネオンの中に二人、紛れて入ったのがこのホテルだった。
「…あいかわらず、ルカは女みたいに華奢だねぇ…。たまには運動しないと、ダメじゃない?」
からかいながらくちづけを落とすタカシの首にルカは腕をまわす。
「…タカシさんほど暇じゃないですからね、オレ…」
「…言ってくれるじゃない?」
情熱のままに、お互いを望んだ。止まっていた時計の針が、またゆっくりと時を刻みはじめる。
最初のコメントを投稿しよう!