第四章 Bar Lucas

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「なんかさー、すっげー最近、わざとらしいテンションだって」   鳴海がアヤシゲな目つきでタカシを凝視する。  「あーんなに、店に入ってもヤル気ナッシングだったのに!!どうしたらこうも変るんだよ、佐屋?」   鼻歌まじりにテーブルを拭いてまわるタカシを眺めながら佐屋は『さぁ?』と肩をすくめた。     結局、ルカ先生はドイツにとんぼ返りして、来月にはマスターの家に転がり込むことになるらしい。 「喧嘩同然であっちの病院を辞めてくることになりますから!」   と、物騒なことを話しながら空港ではかなり嬉しそうな顔をしていたとかいないとか。そんなルカさんは、この歓楽街で近々小さな診療所を開く予定だ。正直、こんな場所だと、カタギの人じゃない方々の主治医になっちゃいそうではあるが、マスターはどう思っているのだろう…?  などと佐屋はそんなふうに考えている。  歓楽街のちょっとした路地裏に入ると、こじんまりとしたピアノバーがある。マスターの趣味で適ったインテリアと、少し時代遅れな疲れた感じ。それが『BAR、ルーカス』だ。バーテンは鳴海。イカしたピアノマンは僕。そして、この店のマスター、タカシ。路地裏にちょっと迷い込んだら…立ち寄ってみませんか?あなたを、今夜も歓迎しますよ。
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