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メルヴィンは真面目なんです。・4
白桃のように白く艶やかな肌は、羞恥のためにほんのりと赤く色づき、唇が触れると更に赤みを増す。
薄いシルクのナイティドレスの裾をたくし上げると、恥ずかしそうに閉じた白い脚があらわになった。
花園を覆い隠す下着も取り払ってしまい、閉じている脚を優しく開かせる。
身体を脚の間に割り込ませ身を屈めたとき、ふとあのことが脳裏をかすめ動きが止まった。
(プロポーズしたことだし、実家に連れて行く話をしてなかった)
寝る前に話そうと思っていたのに、キュッリッキの嬉しそうな様子に飲まれてすっかり忘れていた。そしていざ思い出すと、沸き起こっていた性欲が一気に冷めてしまい、メルヴィンはすっかり固まってしまった。
一方、美味しく食べられるのをドキドキしながら待っていたキュッリッキは、下着を脱がされてから何も起きなくて、「アレ?」と薄く目を開ける。
「メルヴィン?」
やや焦れたような声音に、メルヴィンはハッとした。
「ご、ごめん」
どこか気まずそうに顔をしかめ、放ったキュッリッキの下着を取ってはかせなおした。
「リッキーごめん、ちょっと先に話があるんです」
「えー…」
半身を起こし、キュッリッキはムクレてメルヴィンをジロリと睨む。
「ごめんね」
自分から食べようとしていたのに、食べるのを止めてしまい、メルヴィンはひたすらキュッリッキに謝った。
「えと、プロポーズも無事済ませたし、近日中にリッキーをオレの実家に連れて行きたいんです」
「実家?」
「はい。オレの両親に、リッキーを紹介したいんです」
「!!」
キュッリッキは思わず跳ね上がった。
「メルヴィンのおとうさんとおかあさん」
「オレの花嫁になる人だよって、リッキーを見せたいんです」
「……」
ゴクリと唾を飲み込み、キュッリッキは口を引き結ぶ。
心臓が、トクントクンと早鐘を打つ。
結婚するということは、相手の家族の一員となることだとも、以前マリオンから教わっている。
気に入られることもあれば、一生気に入られないこともあるという。結婚相手とは相思相愛になれても、相手の家族ともそうなるとは限らない。
「……もし、アタシのこと気に入ってもらえなかったら、どうしよう」
キュッリッキの自信なさそうな呟きに、メルヴィンは思わず感心する。
(さすがルーファスさん、鋭いなあ…)
会うのを嫌がってる風ではないのに安心し、メルヴィンはホッと微笑んだ。
「オレの選んだ女性(ひと)を認めてくれる人たちです。だから、会えばすぐ受け入れてくれますよ」
「ほ、ほんと?」
「はい、ほんとです」
まだ不安そうな表情をしつつも、キュッリッキは身体の力を抜いた。
結局セックスする意欲は2人とも萎えてしまい、寝ることにして横になった。
「メルヴィンの育ったところって、どんなとこ?」
ぴったりと身を寄せて、キュッリッキはぽつりと呟いた。その呟きに、メルヴィンはちょっとドキリとする。
実家のことや国のことなど、殆ど話したことがなかった。
これまでキュッリッキが聞いてこなかったのもあるし、キュッリッキの過去を思えば話しづらかったのもある。
キュッリッキの過去に遠慮し過ぎる傾向は、今はあまりよくないとルーファスは言っていた。
出会ったばかりの頃はそれでよかったが、ベルトルドやアルカネットが心を開かせ、メルヴィンの存在が勇気を与えた。だから、メルヴィンのことが沢山知りたいキュッリッキのために、話していくほうが良いと。
「オレの故郷はフロックス群島にあるアッペルバリ交易都市です。以前行ったベルトルド様達の故郷、ゼイルストラ・カウプンキの島々にちょっと似ているところがあります」
「島国なんだね」
「商人たちが築いて、エグザイル・システムもあり、小さくても国として成り立っています」
「自由都市扱いじゃないんだあ」
「エグザイル・システムがありますしね。香辛料、材木を中心に、あらゆる物が行き来してます。そしてオレの実家は街で道場を開いてるんです」
「道場?」
「アッペルバリ交易都市独自のシステムなんですが、傭兵と似たような職業で、用心棒というものがあります。その用心棒の育成や免許を発行する場所を道場と言って、傭兵ギルドみたいなものですね」
「へええ」
「用心棒は商人や商船や商隊を護衛します。人命や荷物を守るため、専用の免許がなくては用心棒を名乗れませんし、仕事ももらえません。当然用心棒としての腕がないとダメだから、戦闘スキル〈才能〉を持つ人が師範となり、道場運営なんてしてますね。傭兵ギルドと違って、道場の規模は小さくて、何軒も街中にあります」
「メルヴィンのおとうさんとおかあさんは、戦闘スキル〈才能〉なんだね~」
「両方とも剣術なんですよ。生まれたオレもそうだから、変わった一家で街ではちょっと有名だったり…」
「同じスキル〈才能〉の子供が生まれてくるのって、珍しいかも」
「奇跡ですね」
2人は顔を見合わせ笑った。
「道場なんて開いてるから、家には住み込みや通いの用心棒見習いが大勢いて、常に賑やかです。今もそうみたいだし、相変わらず元気にやっているようです」
「ふう~ん。でもでも、なんでメルヴィンは用心棒にならずに傭兵…先に軍人かな、になったの?」
その質問に、メルヴィンは上目遣いになって、ちょっと照れくさそうに笑う。
「狭い国で用心棒となるより、世界に出て大きな場所で力を示してみたい、なんて思ったんです……オレも今よりもっと若かったですから」
戦闘・武器系剣術スキル〈才能〉を持つメルヴィンは、SSランクの自分の強さの証明と、更なる強さへの探求、同等の力を持つ者に会いたいという気持ちが強かった。それで選んだ国は、種族統一国家ハワドウレ皇国。
人柄とその剣術の腕前で、メルヴィンはあっという間に実力を示した。御前試合で何度も優勝し、皇国五指の実力者として有名になった。
「国を出て軍人になって、そこでカーティスさんたちと出会って、カーティスさんが傭兵団を立ち上げると聞いて軍人を辞めました。正直軍ではあまり出撃の出番がなさ過ぎて、もっと自由に戦闘できる機会が欲しかったし」
「なんだか、タルコットやガエルみたい、メルヴィンてば」
「あそこまで戦闘バカじゃないと思うんだけどなあ……。でも、本質は同じなのかもしれない」
「戦闘してるときのメルヴィン、楽しそうだよ」
「……や、やっぱ、同じなのか…」
一緒にされたくない、などと内心思っていただけに、実は同類だったと指摘されてメルヴィンは凹んだ。
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