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鷹取光輝03
目覚めたとき、熱はすっかり引いていた。
むしろいつもよりすっきりとした目覚めだった。
布団のぬくもりが気持ちいい。
ゆっくり身体を起こす。どこも変に熱くも痛くもない。身体が濡れているということもない。シーツも服も、きれいなものに変えられている。あのあと早坂がやってくれたんだろうか。
ベッドから下りようとしたとき、丁度早坂が入ってきた。
「具合はいかがですか」
具合……
別に、平気だ、いたって普通……
昨日のことは夢じゃなかったんだろうか。そんな風にも思えてくる。
「熱は……なさそうですね」
額に手を当てられる。ガキじゃないんだからと思ったけれど、何故か素直に受け入れてしまった。
「今日は学校、どうされますか?」
休むに違いない、と思いこんで訊いてきているのが分かって、カチンときた。自分はそんなに軟弱じゃない。
「どうするって、行くに決まってんだろ、テスト前なのに休むわけにいくか」
「じゃあこれをお持ちください」
渡されたのは小さなジッパー袋。中にはあの錠剤が入っていた。いらつきが一気にMAXになる。何でこいつはタイミングが悪いというか……こいつのやることなすこと、いちいち勘に触るのだろう。
「いらねえよ」
嫌なこと思い出させやがって。
「ですが……」
「単に体調が悪かっただけなんだよ。もうすっかり平気だし」
「ですが、何が起こるか分かりませんので」
「何が……って、何だよ」
睨みつける。でも早坂は引かなかった。
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