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金柑の花咲く頃には
「そんなんじゃ親父さん泣いちまうぜ」
幼馴染の言葉に橘花は俊の顔を見上げる。
「自分の名前の由来とか、考えた事無いのか?」
少しだけ咎めるような幼馴染の表情に、橘花は身を竦める。
「御免なさいね俊君、橘花はまだ子供で」
何時の間に来ていたのか盆に麦茶を載せた母が二人の背後に来ていた。
「橘花さんの名前にちなんで姫橘って品種選んだんでしょう?」
自分でも思いついたことも無いそんなこと、どうして彼は知ってるんだろう。
橘花は驚きと感嘆の思いで幼馴染の顔に見惚れる。
「肝心の娘が気付かないのに彼氏の俊君が先に気付いてしまうなんてね」
ホホホと笑う母に体当たりをかまそうかと身悶えして橘花は庭の金柑に目をやる。
只々綺麗な花だな、美味しい実だなと観流していた金柑の木に、両親の想いに育てられていたんだなと幼馴染に気付かされて。
「今年はあたしが俊君の為に自分で金柑の甘煮作ろう」
蕾を開き始めて準備出来たよと気づかせてくれる金柑の甘い香りに、
「あたしだって金柑の花が咲く頃には……」橘花は思う。
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