緋色の過去麻衣 目覚めてから

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緋色の過去麻衣 目覚めてから

 微かな期待・・・私はあの時、何を期待していたのか。 真理子さんと待ち合わせまで約1時間10分。 急いでシャワーを済ませた。急ぐなかでも洗髪は念入りに。 「もしかしたら・・・またつむじにキスが・・・」 裸のままメイクを整え・・・下着まで選んでいた。 今思えば・・・お馬鹿な娘であった。 下着・・・今までは無造作に手前から取り出して・・・。 身に着けていたのに・・・。  駅まで徒歩8分・・・待ち合わせ時間10分前に 部屋を飛び出た・・・。外は咽返る様な暑さ・・・。 「まだ・・・蝉・・・鳴いてるし・・・」  昨夜の、ノースリーブワンピー姿の真理子さんと別人。 スキニ―ジーンズにTシャツ、キャップを深く被った真理子さん。 肩から斜めかけのバック・・・。 バックのストラップの食い込みが大きな胸を更に大きく強調していた。 「ごめんね・・・今夜も・・・」 「あの店でいいよね・・・」二人は大手チェーン居酒屋へ向かった。 歩きながら真理子さんが・・・。 「土・日はさ、なんか部屋に一人でいると損した気分でさ」 「外に食事に出ちゃうのよね・・・」 貴女を特別に誘いたかった訳ではないのよ。私にはなんとなく その様な意味に聞こえてしまった。 私は、勇気を出して・・・聞いてみた。 「彼氏さんと食事とかは・・・どうなんですか??」 ちょっと冷や汗が出ていた・・・ドキドキ。  「君ね~昨夜何を聞いていたのだね??」 「男は面倒で、うざったいってお話ししましたよね~」 真理子さんは、冗談交じりで私を睨みつけた。 それを聞いて、フッと何かが身体から抜け出た気がした。 素足に黒のエナメルのミュールな真理子さん・・・。 カツカツ・・・ヒールの音がリズミカル・・・カッコいい。 カジュアルなラフスタイルの真理子さんを初めて見た。 それだけで、少しだけ身近に感じてしまった。  居酒屋さんでは、他愛のない会話が続いた・・・。 連ドラの話題、私のバイト先のご主人の癖と物まねで大笑い。 でも、収穫は1つあった。 真理子さんは結婚していなかった。一度は結婚し離婚したのかとも 思っていたから・・・私の中での1つのモヤモヤが解消された。 怖かった。かなりの勢いで私は、真理子さんに引き込まれていく。 会話、仕草、視線・・・。唇、髪、指先・・・そして、その人柄。 この短期間・・・違う、短時間の単位だろう。 その短時間に、微かな憧れは・・・恋に変化しつつあった。    トイレを済ませて席に戻る時、遠目で真理子さんを見た。 脚を組み、フロアーに着いた足はミュールを脱いでミュールの上に 乗っていた。組んだ上側の宙に浮いた足・・・ミュールがパカパカと。 またキュンときた・・・カッコいい・・・。  「ご馳走様でした」またご馳走になってしまった。 「今度のバイトの給料日に、ささやかですが私がご馳走します。」 真理子さんは笑いながら、気にしなくていい・・・。と言ってくれた。 付け加えて・・・ 「麻衣ちゃんが、卒業して就職したらご馳走になろうかな・・・」 「それまでは、何も気にしなくていいのよ・・・」 優しい大人の・・・真理子さん。 駅で別れ際、再度深々と頭を下げた・・・つむじにキスを期待して。 キスじゃなかった・・・指でつむじをツンツンされて・・・。 「明日から学校頑張ってね~」真理子さんは帰って行った。 「つむじにキスは???!!!」後ろ姿に向かってそう叫びたかった。 早朝の駅はほとんど人がいない・・・だからキス。 今の時間は、人が多い・・・だから指ツン。 そう思い込み、自分を納得させた。  それから数日後、私はビアンのサイトを閲覧していた。 そこで、爪についての記述を発見した・・・。 『ビアンの女性は、爪は常に清潔である・・・』 『極めてシンプルな爪の女性が多い・・・』 『マニキュアや装飾を施す人は比較的少ない・・・』 『爪を伸ばしている人も少ない・・・』 何故なら?? 『大切なパートナーの敏感な部分を傷つけないようにとの 配慮からである・・・』  咄嗟に真理子さんの爪を思い出そうとした・・・。 ぼんやりと、手の甲全体のイメージしか浮かんでこない。 何度も見ているのに・・・思い出せない。 印象にないと云う事は、装飾やマニキュアはしていなかった? そう解釈してもいいのだろうか・・・。 ならば、この記述によれば、真理子さんはビアンさんの可能性が 高いと理解していいのか? 自分勝手な都合の良い解釈は膨張する・・・。 何かの装飾があれば記憶に残る筈・・・。  私はやはりお馬鹿な女でした。その爪の理論が云ったら?? 看護師さん、理容師さん等はみんなビアンになってしまう。 『大切なパートナーの敏感な部分を傷つけないようにとの 配慮からである・・・』そのパートが気になる・・・。 なんかエッチでイャらしい・・・・。意味深・・・。 パソコンのある机の椅子に座っていた・・・。 座ったまま、きつく足を組んだ。そして太腿の根元の内側に力を込めて 緩めて・・・込めて・・・緩めてを繰り返す。 敏感な部分が圧迫されて反応する。 ジーン・・・ジーンと鈍くもどかしい快感が広がる・・・。 Tシャツ越し、ノーブラの両乳首を軽く摘まんでみる。  思わず吐息が漏れた・・・。 ジーン・・・ジーンの鈍い快感は下から・・・。 そこに、身体がピクンと動く様なシャープな快感が加わる。 「しちゃおうかしら・・・」「したい・・・」 上京し一人暮らしを始めてからは、確実に自慰の回数は増えていた。 実家にいた時は、姉の部屋と後付けのパーテーションで区切られた 約8畳の部屋で生活していた。完全個室ではなかった・・・。 だからプライバシーは極薄の状態だった。  姉の留守に時折、本当に時折のタイミングで自慰はしていた。 その内容は、立ったまま机の角にパンティ越しに擦りつけたり 横向きに寝て、クッションを股間に挟み腰をふる程度の物だった。  金曜日が待ち遠しい・・・。真理子さんの爪を絶対に確認 しなくてはならない・・・。目を皿の様にして確認するのよ。  
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