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重太郎は伯父・七左衛門にも話を聞いてみることにした。
「伯父上、辻と堀田殿の件でございますが」
「うむ、それがのう……」
叔父はいつにもまして歯切れが悪い。
「堀田殿は大身でもあり、過ぎたる話であるのはよう分かっておりまするが、それにしてもこう、何と言いまするか、年の頃もう少し釣り合いの取れた者が……」
「いやいや、解っておる、皆まで言うな。皆まで言わんでもよう解っておる。しかし、辻が、太閤殿下の女房方の物見遊山や、お歴々の鷹野などの手伝いなどしているうちに、堀田殿は、そのてきぱきとした働きぶりを気に入ったと申されてのう」
「辻は、城の御殿から出たこともないような太閤殿下の女房方とは違いますれば、当然のこと。辻がようできた娘であることは、疑いございませぬ。なればこそ!」
「分かった、分かったからそういきり立つな。辻は我が家の娘でもある。断ることは、いつでもできるのじゃ。そうじゃ、お主、堀田殿に会いに行ってはどうかな?」
「……」
重太郎も結局はそうせざるを得ないだろうと思った。
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