融解

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 私の悲鳴も、私の願いも、私の意思も、私の涙も、私の叫びも、何一つ意味など持たないと知るとき。この苦痛が、悲嘆が、いかばかりであろうとも、それは神を微塵も動かしはしないと知るとき。私には何の選択もできず、すべては決められた通り私はそれを受諾するしかないと知るとき。  この躰からあふれ流れるもの、それはたとえば涙ではなくて、私の意思、私。もっと溶けて流れてゆけ。私がなくなるまで。  私に意思はない。私の意思は認められていない。私に選択の余地はない。私に自由はない。私は世界に介入できず、私は世界を変えられない。これほどの自由が他にあろうか。    私はただひたすらそう在らしめられているところのものとして存在する。世界は《神》の望むがままに。世界はあるがままで完全であり、それは赦されている。  唇を塞がれたまま祈る私の声などどこにも届きはしないことを私は知っているけれど。    しかし甘い蜜にみたされた午後は確かに存在し、私はうたたねするようにみもこころもゆだねきっていたのでした。私の頸を締め付ける指を微笑みで迎え、眠りの中にとろりと沈みこむように意識を失ったものでした。  あのとき、神のようなあなたと溶けあえたあのとき。  ずっとあのままでいさせてくださればよかったのに。
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