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灯琉との電話を切った後、僕は本棚の上に乗せていたタイムカプセルを抱き寄せた。
図工の時間に作った、不格好な木箱。これでも4人で作った中では一番の出来だったので、僕のが選ばれた。
そっとフタをスライドさせて、灯琉からの唯一の手紙を取り出す。
タイムカプセルを掘り出したその日も、僕とえだっちと今ちゃんとで読んだし、
この手紙が届いた当時も、芦屋クンも含めてみんなで読んでいた。
【真守、元気?
みんなも変わりないか?
まぁ、まだひと月経ってねぇもんな。
東京さぁ、もっとごみごみしてるとこかと思ってたけど、意外とそうでもねぇ。
てか、ここ、東京の端っこだし。緑に囲まれてなかなかいい所よ。
こっちの奴らもなかなかいいよ。ゲームばっかしてるのがちょっと気になるけど、まっいいか。
俺さぁ。
やっぱり、せめて、そっちで小学校を卒業したかった。
俺って、卒業アルバム貰えるのかな?
あー、それからさ。あの日の事。
みんなにちゃんと言わないで別れちゃったから、今書くな。
俺のわがままに付き合ってくれてありがとう。
ランドセル背負って自転車走らせた事、
色々寄り道した事、
みんなであんなに泣いた事、
俺一生忘れねぇから。
たまにそっちに帰りたいって言うと、父さんが渋い顔をするから、あ、無理なんだなって思ってる。
でもいつか、父さん関係なしに俺ひとりでそっちに行ける時が来たら…
その時はよろしく。
じゃ、また手紙書くな。つうか、今度はお前の番。待ってるからな。
えだっち、今田、芦屋にもよろしく言っといて。
灯琉より
P.S. 芦屋はクラスに馴染んだか?】
これを読んだ芦屋クンは大号泣、教室で読んでいたから、クラスのみんなが何事かと集まった。
「大丈夫だよ。僕は、大丈夫だから」
多分灯琉に向けた、芦屋クンの言葉。
僕ももう、あの近くには住んでいない。同じ市の少し栄えた所に住居を構えて、家庭を築いている。
灯琉が一泊した後、二人でサイクリングロード、いや今は○○ロードって言うんだっけ、走ろうか。
自転車、どこで借りよう。坂本輪業はとっくの昔に閉まってるし、他にあの近辺であるか調べてみよう。
灯琉はどんなカオをするかな?
今度は僕が、秘密の案内をする番だ。
シークレットガイド〈完〉
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