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第四話 疑心のあったかうどん
一
平日の夜に谷口と会うのは初めてだ。平日の夜、すなわち会社帰り。
谷口には確かめたいこともあったし、スーツと仕事用めがねで武装した状態で会うのは、いかにも俺に都合がいいように思われた――が、しかし。
会社帰りということは、心身ともに疲れ切った状態ということでもある。
それを忘れたまま、夜の待ち合わせに向けて気合いを入れて仕事に励んだ俺は――仕事が終わり、三鷹駅の改札をくぐる頃には、ヘロヘロになってしまっていた。
現在時刻は二十一時。昼飯を食ってから九時間は経過している。
谷口ストーカー疑惑も、俺の記憶力悪すぎ問題も、今はどうでもいい。
ただただ、腹が減っていた
二
谷口の指定した店は、大通りをまっすぐ進んだ先にあった。
こじんまりとしたビルの一階。目印は『うどん』の立て看板だ。
通りに面した店先はガラス張りで、日本酒や焼酎の瓶がディスプレイされている。
これまたガラスの引き戸が薄く曇っているのは、水蒸気だろうか。
ぐらぐら煮えて湯気を上げる鍋と、その中を泳ぐ真っ白なうどん――想像して、腹がきゅうと縮んだ。
戸を開けると、湯気に包まれて視界がふわりと白濁する。
曇ってしまっためがねを一度外して、スンと息を吸い込んだ。
想像どおりの――うどんを茹でるとき特有の、小麦粉がとろりと溶けたほの甘い湯気のにおい。
めがねのレンズを軽く拭いてかけ直し、店内に目を配る。
L字型の小さいカウンターに、席が七つほど。
「あ、千島! いらっしゃいませー!」
そのカウンターの中に、谷口がいた。
「おう、昨日ぶり」
「昨日ぶり。お仕事お疲れ様だね」
「そっちこそ」
カウンター席の最奥が空いていたので、そこに腰掛けた。
脱いだスーツのジャケットは、隣の席の椅子の上に。
そういうことが気兼ねなくできるくらいに、店内は空いている。
月曜日の夜だからだろうか。客は俺と、シャツ姿の中年男性が一人だけだ。
お冷を手にした谷口が、にこりと笑った。
もうもうと上がる湯気のせいか、いつもより少しだけ顔が赤い。
「千島が来るの楽しみにしてたら、一日あっという間だったよ。お冷どうぞー」
「……おう」
さらりと付け加えられた好意的な台詞に、どきりとする。
――いや、どきっとするこたないのか?
――気のいいコミュニケーション強者は、このくらい普通に言うものなのか?
渦巻く疑心と答えの出ない仮定を押し殺して、努めて笑顔でお冷を受け取った。
谷口は相変わらず、邪気のなさそうな顔でこちらを見ている。
「千島、腹減ってる?」
「すげー減ってる」
間髪入れずに返すと、谷口はこれまた邪気なく破顔した。
三
谷口との会話を中断して、メニューを手に取る。
この店の主力はうどんだが、揚げ物や小鉢をつまみに酒を飲むこともできるらしい。
メニューのトップは温かけうどん、冷のぶっかけ。このふたつを筆頭に、多種多様なうどんが名を連ねている。
温か、冷か――うどんの湯気が満ちた店内は、ほのかに汗ばむくらい温かい。
ネクタイを少し緩めて、考えた。
――冷、か……?
そのとき、ガラス張りの引き戸が風で小さく軋む。
駅からこの店までの道中、少し風が冷たかったことを思い出した。
せっかくうまいものを食べるのだから、帰り道に寒くて悲しい思いはしたくない。
ここは温かいうどんを中心にメニューを読み込んでいくことにしよう。
ゆずうどん、ネギうどん、しいたけ天うどん。
そこまで目を通したタイミングで、谷口が「お客様」と余所行きの声を掛けてくる。
「お飲み物のご注文はいかがですか?」
「あ、飲み物? えーっと……」
メニューをドリンク用のソレに持ち替えて、ぱらりとページをめくる。
ビール、各種サワー、ハイボールにカクテル、ノンアルコールカクテルまで。
日本酒と焼酎も種類が多い。
「下手な居酒屋より選べるな」
「こないだ昼に会ったときはノンアルだったし、今日はお酒にしたら?」
「酒かあ……」
ちらりと谷口を盗み見る。
こちらは少し気まずい質問を腹に抱えている身だ。少しアルコールを入れておいたほうが、気楽に話せるかもしれない。
「それじゃあ、」
このあと注文するのは、なにかしらの温うどん。というところまでは決まっている。
汁麺を食うなら、酒は日本酒か焼酎……と思ったところで。
「千島、一杯目のオススメは焼酎サワーだよ」
「焼酎サワー?」
「そこのメニューにある焼酎を、炭酸で濃いめに割ったやつ。ほら、焼酎の『選べる割りモノ』に炭酸入ってるでしょ」
「じゃあ、それにするわ。焼酎は……」
メニュー内、焼酎のブロックに目を移す。
名前を知っているのは黒霧島くらいだ。
だが『好きな酒は赤ワイン』などとSNSのプロフィールに書くような男の前で、有名すぎる焼酎を頼むのは、なんだか癪だった。
「ええと……焼酎はダバダで」
癪だった。うっかり見栄を張りたくなった、ともいう。
「ダバダを炭酸割りで、ですね。少々お待ちくださいませー」
谷口はこちらに背を向け、カウンター奥の棚に並ぶ焼酎のデカい瓶に手を伸ばす。
その背中を見ながら、思う――炭酸と汁が被ってしまった。
しかも、飲んだことがない不思議な名前の焼酎サワー。
すきっ腹に焼酎なんて入れたら、すぐに酔っぱらってしまいそうだ。
――早急に、うどんを注文しなければ。
温うどんのメニューに目を落とす。どこまで読んだのだったか……
ふと、『ちく天うどん』という名前が目に飛び込んできた。
ちく天――ちくわの天ぷらか。
温かいうどんに、ぽちぽちと浮かぶ天ぷらの油。
つゆがたっぷり染みて、しっとりした衣。
油をくぐってモチモチ感を増した、大きいちくわ。
――完璧なチョイスでは?
練り物の天ぷらを重く感じる日もあるけれど、空腹を極めた今日ばかりは大歓迎だ。
そのとき。タイミングよく谷口が俺のほうを見た。
「お待たせしました、ダバダの炭酸割りです。それから本日のお通し、ごま豆腐です」
「ありがとうございます」
お通しの存在を忘れていた。
空腹を焼酎が直撃という事態は避けられそうで、ほっとする。
そんな俺をよそに、谷口はおかしそうに笑った。
「あはは、敬語」
「ほっとけ。ていうか今、谷口は店員だろ。店員には敬語を使うものです」
「使うものなのですか」
「そうなのです。店員さん、ちく天うどんお願いします」
「はーい、かしこまりました……ふふ」
くすくすと笑いをこらえながら、谷口はカウンター内での作業に戻っていった。
なんだか今日の谷口は、よく笑う。
いつもニコニコしている奴ではあるけれど、それを差っ引いてもご機嫌だ。
何かいいことあったのか? と聞いてみたかったけれど、他にも客がいる状態で谷口に話しかけるのは躊躇われた。
まずは、目の前のダバダとごま豆腐に集中しよう。
――さて。
俺が見栄を張って注文した『ダバダ』という酒は、栗焼酎らしい。
栗焼酎の、炭酸割り。
おおぶりで分厚く、青みがかったガラスの蕎麦猪口に、なみなみと注がれている。
氷は、四角いものがみっつ。
蕎麦猪口に口を付けると、栗という単語から想像していたよりも、ずいぶんさっぱりした香りが広がった。
飲みやすいな、と思った瞬間、じわりと喉が熱くなる。
ぐいぐい飲むとダメなやつだ。
濃いめに割った、と説明されるだけのことはある――胃が空っぽであることを思い出して、慌てて箸を手に取った。
お通しは、白ごま豆腐。たれは掛かっていない。
なめらかなアイボリーに、黄色い柑橘のピールがちょんと乗っている。
うまそうな色合いだな。と思って鞄の中にカメラを探そうとしてしまい、はっとする。今日は会社帰りだから、あのデジタル一眼は持っていないのだ。
スマホのカメラを使うという手も、あるにはあるが――自分の捨ててきた人間らしい生活を切り取って集める、という決意を込めたあのカメラ以外で撮っても意味がないような気がして、やめてしまった。
――そのかわり、しっかり目と舌で覚えておこう。
ごま豆腐に箸を差し込むと、ねっちりとした弾力が指に伝わってくる。
そのまま一切れ千切り取って、口へ。
濃厚な白ごまの香りと、出汁醤油らしい風味が控えめに広がった。
記憶の中のごま豆腐より甘さがなくて、どことなくおかずっぽい。
さっぱりした焼酎の炭酸割りにぴったりの味だった。
ごま豆腐を口に運び、合間に炭酸で口を濡らしていると、先客の男性が席を立った。
会計処理をする谷口を横目に、今日はもう新しい客はこないのだろうなと思う。
谷口が俺を飯に誘うのは、いつも店が暇な時間帯だ。
俺としても、他の客がいないほうが話しやすい――今日は、特にそうだ。
四
「お疲れ、谷口」
「うん、ありがとー」
中年男性を送り出して、カウンターの中に戻ってきた谷口が、くるりと肩を回す。
「今日は月曜日のわりに人が来たなー」
「そうなのか?」
「いつもは週明けなんて、七時過ぎたらずーっと暇だもん。だから千島誘おうって思ったんだよね」
谷口が壁にかかった時計を見る。
つられて時計に目をやると、そろそろ十時になろうとしていた。
「そういえば、この店って何時までだ?」
「ここ? 十一時だよ」
「けっこう遅くまでやってるんだな」
「うん。でも、うどんがなくなったら早く閉めることもあるかな。そこはオーナーさんのこだわり的なやつで」
そんな雑談をしながら、谷口は湯の煮え立つ大鍋をのぞき込む。取っ手が付いた、小さい深底のざるのような器具――うどん屋やラーメン屋でよく見る、麺の湯切りが楽しそうなアレだ――を軽く揺すっている。
その隣には、油切り用らしい銀のバット。大きなちくわの天ぷらが乗せられていて――
「心配しなくても、これ千島のだから。もうちょっと待ってて」
谷口が、からかうように宣言した。
手元を凝視していたことがバレて少し気まずい。
思わず目をそらすと、視界の端でまた、谷口が笑った。
間を置かず、カウンター越しに谷口がトレーを差し出してくる。
「……はい、お待ちどうさま。ちく天うどんです」
「どーも」
「店員さんには敬語なんじゃなかった?」
「お客さんは腹が減ってるので敬語終了」
トレーの上には、ほかほかのうどんと、ちく天。
ちくわの天ぷらは、わざわざ別の皿で運ばれてきた。
衣に、ぽつぽつと緑が混ざっている。
磯辺揚げだ。
「いただきます」
「はい、召し上がれ」
ちく天をうどんに乗せようとして、踏みとどまる。
まずはうどんだけで、ひとくち。
うどんのコシを楽しみながらつるっと飲み込んで、口の中につゆが残っているうちに、ちく天をかじり取る。
つゆに浸っていなかったちく天は、まだサクサクだ。
ほんのり香るアオノリが揚げ衣の油っぽい匂いと混ざって、口の中に薄い油の膜が張る。
それを洗い流すように、またうどんをすすった。
「おいしい?」
「おう」
「ん、よかった」
返事をしながら、今度こそうどんにちく天を乗せる。
そんな俺を見届けて、谷口はカウンターの奥に引っ込んだ。
しばらくすると水の音がし始める。
洗い物でもしているのだろうかと思った、そのとき。
――谷口の顔が見えない今こそ、アレを確認するときじゃないか?
そう思い至って、手の中の箸をぎゅうと握りしめた。
水音が、やけに耳に響く。
なにげない話題に聞こえるよう意識して、ゆっくりと切り出した
「……あのさ」
「んー? なに?」
水音に負けないためか、いつもより少し大きな声で相槌が返ってくる。
「谷口さ、昨日、オムライス誘ってくれたじゃん」
「うん。あ、なんか連日になっちゃってごめんね」
「いや、それはいいんだけど」
水の音が消える。谷口が、店の奥からひょいと顔を出した。
店内が、やけに静かになったようなが気する。
しかし後には引けない。
「谷口さ、なんで俺がオムライス好きって知ってたんだ? 俺、どっかで喋ったっけ?」
「喋ってないよー。でも俺、千島のSNSとか見てたから」
「え?」
あっさり返されて、思考が追い付かない。
「ほら、大学生のときにアカウント作ってたでしょ。本名で登録するやつ」
「あ、ああ。うん」
「あれ、俺も登録してるんだけどさ」
知ってる、見た。けっこう読み込んだ――という言葉は、ダバダのソーダ割と一緒に飲みこんだ。
黙ったままの俺を訝しむことなく、谷口は言葉を続ける。
「あのSNS、使ってるとプロフィールからアカウント特定して、『知り合いじゃない?』ってオススメされるから。それで千島のアカウント見つけたんだよね」
なんてことない風に言っているが、谷口のそれは――
「――いや、よくあるだな?」
「だよねー」
ストーカーでもなんでもない。拍子抜けだ。
むしろ、ここまで無駄におびえていた自分が恥ずかしかった。
「まあ、見つけただけで繋がる申請はしなかったんだけどね。あの頃はさすがにちょっと気まずかったから」
「あー……そうだよなあ……」
「でも気にはなってたから、ちょいちょい見てたよ? 谷口のアカウント」
「いやストーカーかよ」
「えっひどくない?」
「まあ俺も谷口のアカウント探したけど。今日の朝」
「そっちもじゃん! ていうかアカウント見つけたなら繋がる申請してよ」
本当に拍子抜けだ。
しかも手元に目を落とせば、うどんに乗せたままのちく天がしっとりしてしまった。
冷めないうちに、と慌ててかじると、つゆを吸った衣がとろりとはがれる。
でも、まだ温かかった。
ほっと胸をなでおろす。――と、新たな疑問がわいてくる。
適温になったうどんをすすって、今度は素直に口を動かした。
「ていうか谷口、気まずかったって……俺らが喧嘩したこと憶えてたんだな」
「憶えてるに決まってるでしょ!?」
「いや、だってさ。お前ぜんぜん話題に出さないから」
「いやいやいや。会ってすぐに『俺たち喧嘩してたよね?』とか言い始めるとか、そっちのがめっちゃ気まずいじゃんか……」
「なるほど」
「なんだと思ってたの!?」
谷口は大声を出して、大きく息を吸って。
何か言いかけたのを飲み込んで、呆れたように溜息をついた。
「あんな風に友達と別れたら、そりゃ仲直りしたいと思うって。谷口、いつのまにか連絡も取れなくなっちゃったし」
「……それは悪かった」
「ほんとだよ! ……それでね、最初はどうにか連絡取ろうと思ってたんだけど」
少し言いよどんで、谷口はまた口を開く。
今日の彼は、いつもより饒舌だ。
「だけど、どうして千島が怒ったのかわかんないと、仲直りのしようがないから。だから、なんで千島が宗旨替えしたのかなーとか、文系の学部のどのへんが好きなんだろーとか、そういうのが知りたくて、SNSチェックしてた」
「それ、SNSでわかったか?」
「ぜんっぜん!」
また溜息をつく谷口を見て、そうだろうなあ、と思う。
十年前ならきっと言えなかっただろう。
でも、あの喧嘩から十年だ。
驚くほど自然に、言葉がこぼれる。
「あのときごめんな、谷口」
「うん、俺もごめん」
「俺さ、理系大学を目指すのやめたのは、文系の学部に興味持ったからじゃないんだよ。ただ自信がなかっただけで」
「そっかあ」
そう言って、谷口はふにゃっと笑う。
それだけで肩の荷が下りた気がした。
谷口はそのまま、食器の片づけを始めた。俺も、うどんに向き直る。
しばらく無言でうどんをすすって、あらかた片付いた頃。
谷口がぽつぽつと切り出した。
「……なんか、さあ」
「ん」
「大学入試の直前の、あの頃ってさ。文系理系の選択が人生の分かれ道みたいな感覚があったよねえ」
「あったなあ……以外とそうでもなかったわけだけど」
「そう! ずーっとひとつのことだけして、生きてくわけじゃないのにね。俺なんか、今でもふらふらしてるし」
「お前、覚えてるか? 俺が文系の大学目指すって言ったとき『文系は就職大変だよ?』って言ったの」
「うわー! やめて! ごめんなさい!」
「谷口くん? 就職は大変だよ?」
「わかってるよおおおお! もう……!」
「はっはっは」
空気がゆるゆると元に戻っていく。
「そういえば、SNSじゃ千島のことなーんもわかんなかったけどさ。好物とか、よく行く居酒屋の雰囲気とかはわかったよ。千島、大学一年生の最初のほうは割と更新してたし?」
「お前は今もマメにやってるよなあ」
「まあ、惰性で? それに『飲食ヘルプ対応できる人』ってことでゆるーく繋がってると、何かと便利だからね」
「なんか……無理なく使えててすげーな。俺はああいうの、すぐ面倒になるからさ」
「千島だって、最初は楽しそうにしてたじゃない。俺、SNSで楽しそうな千島を見たから『まあ文系大に千島を譲ってやってもいいかな』と思ったわけだし」
「元カノかよ。愛が重いわ……」
「あはは!」
そのとき。谷口のスマホが鳴った。
「あ、ちょっとごめん」
軽く断って、谷口はバックヤードに下がる。
その気安さが、今は無性に心地いい。
なんだか高校生の頃よりも、谷口と仲良くなったように感じられた。
かすかに聞こえてくる親し気な会話をBGMに、気分よくうどんをすすっていると――
「ごめん、おまたせ」
戻ってきた谷口は、何故か少しだけ張り詰めた空気をまとっていた。
「……どうした?」
「あのさ千島。今週末って空いてる?」
「空いてるけど」
「じゃあっ、さ!」
カウンターを乗り越えん勢いで、谷口がぐいと身を乗り出す。
――近い近い近い。
思わず身を引いた俺に構わず、谷口は興奮した様子で言葉を紡いだ。
「土曜日に、遊び行かない!?」
「いいけど。今度はどんな店なんだ?」
「あの、俺のバイト先じゃなくて……どっか。どっか遊び行こうよ! 俺――今週末は休みになったから!」
もはや鼻先に息がかかるほどの距離。
その距離で谷口の呼気を感じて、俺は悟った。
「……おい不良店員。お前、仕事中なのに酒飲んでるな?」
谷口の額に手を当てて、やや乱暴に押し返す。それでも、谷口は晴れやかな笑みを崩さなかった。
「うん! 夕方に来た常連さんがおごってくれて、ちょっとだけ!」
「だからか。にしてもテンション上がりすぎだろ」
「そりゃ上がるよ! やった――ー! 休日休みだ!!」
はしゃぐ谷口の大声につられたのか、大通りをゆく人が店をちらちらと見ている。
――おい店員さん、静かにしないと客が増えるぞ。
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