君の絶望と交換

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私が千秋と出会ったのは、一年前。 恋活と称して飲み歩く同期の話を聞いて、私はまともな恋愛経験がないことに焦った。 すぐに私はその同期から、いかにして人と出会うかを聞き込んだ。 教えてもらった怪しい出会い系アプリは、顔写真を載せて五分で登録が終わった。 翌朝、私のページを見て声をかけてきたひとに返事をした。 二つ下の千秋は、そのときまだ大学生だった。 地方から出てきて、都内で一人暮らしをしている。 お金の使い方が下手くそで、仕送りをすぐに使い切ってしまい、毎日バイトばかりしているとのことだった。 私と千秋が会うのはいつも週末だった。 二人ともお酒が好きだということで、仕事終わりに飲みに行くことが多かった。 千秋は明るくて、人懐こくて、会話が上手だった。 千秋と話していると、普段営業先で振りまくような笑顔がどろどろにくずれていく。 それがとっても気持ちよかった。 彼といると、私はじんわりと温まるように笑っていられた。 仕事の話とか、いままでの恋愛の話とか、他愛もないことを話して、気持ちよく酔っ払って、それぞれの家路につく。 千秋が年下の学生ということもあり、飲み代は半分ずつ出して、端数は私が払っていた。 千秋がすこし背伸びをしていることに気がつくと、次第に安いチェーン店の居酒屋に変わり、私が多く払うことが増えた。
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