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「仕事決まったよ」
その夜、千秋の言葉を聞いたとき、私は頭がまっしろになった。
「結局、バイト先のひとが紹介してくれてさ。都内のバーなんだけど、結構単価が高いところで」
しばらく黙ってしまった。ようやく出た一言は、けっこうしょうもなかった。
「休みが合わないじゃない」
千秋は面食らったような顔をして答えた。
「そりゃ、ひとが休んでるときに稼ぐところだからね。でも、これで、僕にも頼ってもらえる」
「一緒に住んでても、一生会えないなんて、他人と同じじゃない。」
「でも、僕、このままフリーター続けてても、将来が見えないよ」
千秋の言葉に、喉がつまった。
「どうしてミカさんは、僕が働くことに反対するの?」
「ちがう、ちがうんだよ。そうじゃなくて……千秋が、勝手に話進めてる」
「なんでなの? ミカさんが何を言いたいのか、わからないんだけど。ちゃんと、ミカさんの言葉で言ってよ」
言葉を急かされると、無意識に胃のあたりがうずいた。
「千秋はなんで、私を選んだの?」
私の口から出た言葉は、情けなかった。
「私を選んだのだって、こうやって家に転がり込めそうな女だと思ったからでしょ?」
「なんで、いまその話?」
千秋が眉間にしわを寄せた。それがこわくて、私はうつむく。
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