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「私、もっと、色々、知って、遊んで……」
「生きたいなら生きていいの!」
泣きじゃくるカルネを抱きしめイルドは声を絞り出した。
あまりにも悲痛な姿にイルドの目にも涙が滲んでいた。
こんなに健気で。
こんなに素晴らしい少女なのに。
何故、この子の母親はこんな惨い呪いをかけたのだろう。
どうして、素敵な才能だと喜ばなかったのだろう。
我が子が優秀なのは、この世界では一番の喜びにつながるというのに。
母親の嫌いは。
子どもにとっては、死ね、と言われているのと等しいのに。
「でも、でも、お母、さんが……」
「今目の前にいるのは私、イルド!」
しゃくりあげ泣くカルネの肩を掴みイルドは視線を合わせた。
きっと彼女は我慢していた。
本音を言っちゃだめだと我慢していた。
その我慢を、今吐き出している。
それはここでは言っていいと判断したということ。
イルドのことを少しでも信頼していい存在だと感じたということ。
ならそれに答え、行動する。
全身で、魂の底から。
イルドは叫ぶ。
「私は貴女に生きてほしい! 貴女にもっと生きることを楽しんでほしい! だから私は貴女を助けたい! その呪いを解きたいの!」
イルドは再びカルネを抱きしめた。
小さな体で大声で泣く少女を力いっぱい、愛情をこめて。
「苦しかったでしょう。辛かったでしょう。でももう大丈夫。私が貴女を助ける」
「でも、呪い、は、周りに、も」
「知ってる」
カルネが言わんとしていることを汲み取りイルドは優しく言った。
カルネを蝕む呪いは周りにも影響する呪い。
今は封印しているから発動しないが、こんな風に抱きしめることもできないほどの影響を周りに与えるかなり強力な呪い。
イルドが知らない最強最悪の呪い。
だから。
解き方がわからないなら、探しに行けばいいのだ。
「カルネ。貴女は何も悪くない。何も悪くないの。だから」
歯を見せて、イルドはにっと明るく笑った。
「その呪い。全部消しに行こう!」
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