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翌朝。
「お前……寝ずに待っていたね?」
イルドが目覚め、準備をしようとリュックを探していたら玄関で準備万端のタイタンが腕を組んで仁王立ちしていた。
イルドは不死身ではあるが、睡眠や食事など人として必要なものを取り入れないと死ねない苦痛だけがあるので三食きっちりとり睡眠も人並みにしている。
だが、息子のタイタンは違う。
心臓を貫いたら死んでしまうし不死身ではないが、寝なくても永遠と動き続けることが出来る体だ。
エネルギーとして食べ物を補給すればそれはもう永遠に。
特異体質、無限体力。
不死身のスキルを持つイルドから生まれたことがいくらか関係はしているだろう。
その原理は全くの不明だが。
とにかくイルドの息子はまだ10歳で育つのに睡眠が必要だろう年齢だろうに、寝ずに永遠と体を動かし続けれるとんでもない少年だ。
足元にバナナの皮が転がっている所を見て、恐らく一晩中立って待っていたのだろう。
リュックがタイタンが背負っているのを含めて3人分あるところからして、カルネやイルドの旅の準備をすべて終えて。
「念には念を、てやつだ」
どこからか取り出したバナナを貪りながらタイタンは言った。
「母さんのことだし、あんだけカルネと2人で行きたがってたなら俺が準備できてなかったら置いてくつもりでいると思ったしな。実際起きたのも早いし」
言いながらタイタンは近くの時計を見上げた。
時計は、朝5時という早朝であることを教えていた。
「……ああ、賢い子、てのは確かに憎いものがあるねぇ」
フッ、と愁いを帯びた表情を浮かべるイルドに「子どもなめんな」とタイタンはどや顔で言ってのけた。
そこにソギアがやってきて「ああ、ここにいらっしゃいましたか。部屋を覗いたらカルネちゃんが目覚めて不安そうにしていましたよ」と言って、背後の陰に「ほら、いましたよ」と声をかけた。
「イルド……?」
不安げな表情を浮かべた少女がソギアの背から顔を覗かせた。
「ああ、おはよう」
「おはよう」
イルドに続きタイタンも挨拶をした。
その自然なあいさつに、カルネはホッとしたように安堵の笑みを浮かべると「はい、おはようございます」と返した。
瞬間、タイタンの頬がふわっと赤らんだ。
それを見逃さなかったイルドはにやぁと笑みを浮かべる。
その笑みに気づいたタイタンは「ふん」と怒ったようにそっぽを向いた。
謎のやり取りにカルネは首を傾げながらも「あの……」とおずおずとイルドに声をかけた。
「ん、なんだい?」
「イルドの……あ、タイタンの、お父さんは?」
カルネの質問にイルドは肩をすくめ「アイツはいろいろと忙しいからいないものとして扱っていいよ」とため息交じりに答えた。
「さ、急かして悪いけど、朝飯を食べたら早速行くよ」
イルドはカルネの頭を優しく撫でた。
そして、にっかり笑って、言った。
「まずは、教会だ」
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