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朝食を食べ終え、早速出発した3人は数時間歩いたのち、教会にたどり着いた。
道のりは平坦な道なのと、タイタンは疲れない体なので、カルネを馬に乗せて歩くことで休憩もなしにたどり着くことが出来た。
馬は幼児が乗りやすいようイルドの腰あたりくらいの高さで、元気があり体力もタイタンに負けないほどある馬だった。
正確に言えば、純白魔族でイルドが従えている一本角馬の元気な子どもを借りたのである。
魔物なだけあり、ちゃんと戦闘も出来一人でカルネを守れるくらいには強く、不安定ながらも空を一定時間飛べるのでこれが一番安全な乗り物とも言えた。
カルネは利口でありながらでも年相応の感性を用いているようで、乗った瞬間「うわぁ、すごい、うわぁ……!」と顔を輝かせて喜んでいた。
その様子を微笑ましく見守りながら一行は協会にたどり着いた。
イルドが協会の扉を開くと、美しい歌声があふれ出した。
とても澄んでいて、思わず立ち止まって聞き入ってしまうほどの歌声に、カルネは「綺麗……」と呟いた。
そんなカルネにイルドは微笑み「ま、歌姫の歌だからねぇ」と言って中に足を踏み入れた。
「おーい、神父はいるかーい!」
イルドの叫びに、歌声が止まった。
歌声の主はイルドたちに気づくと「あら、いらっしゃい」と声をかけた。
女神の石像の前に立つ姿は美しく、カルネは「わぁ……」と頬を染めて見入っていた。
背中に流れる艶のある長い髪、髪と同じような赤さを持つ妖艶な唇。切れ長の眼、美しく整った顔。
生まれて初めて見た美女に、カルネは息を飲んだ。
異性であれば目がいって仕方ない美女であるのに、タイタンはそういった感性がないのか「ここおばちゃんの家じゃなくない?」と顔をしかめていた。
タイタンの言葉に、美女のにこやかな微笑みがピシリと固まる。
「あらー、タイタン。貴方もいたのー。相変わらず……」
美女はタイタンに近づくと両手を伸ばしタイタンを抱きかかえ。
「生意気なガキだね、ええ?」
と声を裏返し、怒りに満ちた声でぐりぐりとタイタンの頭を拳で押さえた。
「いだいだいだい」
「おばさん、じゃなくて、お姉さん、だろ!?」
「だってもう30越えてるし……」
「おばさんは50越えてからだって言っただろう!? レディに失礼だよ、レディに!!」
「でも俺から見たらおばさん……」
「お前本当いい加減にしな? あ?」
そんなやりとりをしながら、怒りに満ちた表情で女性はタイタンの頭をぐりぐりと押さえる手に力を込めていた。
あの美しい姿はどこへやら。
一気に鬼のような魔女になった彼女にカルネはぽかんと口を開け唖然と見守ることしかできなかった。
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