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そんな日々を数年続け、疲れすらも感じない帰り道。
国の前に真っ黒な生き物がいた。
「魔物……?」
国にはイルド特性”勇者姫の守護”という魔物を召喚しない限り一斉寄せ付けない結界が施されている。
「誰かが召喚して捨てた魔物かしら」
酷い人間は、当たり前のようにいる。
例え、自分が愛し守る国の中でも。
イルドは蠢くその黒い物体に近づいた。
虫系か、はたまた獣系か。
近づいて、はたと足を止め、イルドは気づく。
「ちがう」
イルドは駆け寄った。
そしてその黒いものに触れた。
「うう……」
うめき声が漏れ、顔が見えた。
人間。だが、小さい。
「女の子!?」
抱き上げてその軽さに驚く。
子どもとしてもまだ育ち切っていない。
推定4歳といったところであろうか。
そんな少女が真っ黒になって国の入口に横たわっていた。
しかもこの黒い物体は。
「呪い……」
イルドは息を飲んだ。
見たこともないほど大きな呪いだった。
その呪いの大きさは、魔王に匹敵するといっても過言ではないほどのものだった。
余程の手のものが呪いをかけたのだろう。
触れるだけで計り知れない憎悪がイルドにも襲ってきた。
イルドは咄嗟に呪いを跳ね返す”守護の衣”を唱え、身を守った。
それでも、少女に触れる手は痛みを感じた。
これほど強力な呪いは見たことがなかった。
ましてや、こんな小さな子に呪いがかけられていることを見るのも初めてだった。
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