25人が本棚に入れています
本棚に追加
イルドは痛みに苦しみながら叫び、”守護の衣”で少女を包む。
黒い靄は主に少女の頭から湧き出ているように見えた。
イルドは靄の根源を探るべく少女の頭に手を添えた。
瞬間襲い来る痛み。
少女がこれに悶え苦しんでいるのかと思うとイルドの胸が痛み、同時に絶対に助けると意志が強まった。
呪いは必ず魔力がこもっている。
故に、魔力無効化をぶつければ消せるはず。
根源さえ、消せば。
イルドは根源を探した。
少女の身体のどこかに埋め込まれているはずの呪いの源を。
イルドは痛みに耐えながら少女の身体中に青い光を放った手を当て、探り。
見つけた。
そして、絶句した。
根源は、脳そのものだった。
そこに魔力無効化を当ててしまえば。
少女が少しでも魔力を持っていれば命を失うことになる。
「……く、ならば!」
イルドは苦しむ少女を地面に寝かせると、両手を合わせ呪文を唱えた。
イルドの両手が虹色の光を放つ。
「一時的だが……今はこれしかない。封印!」
少女の頭に虹色の両手を当てた。
黒い靄が悲鳴を上げるように激しく蠢き、少女の脳へと吸い込まれるように消え。
少女を包んでいた黒い靄は全て脳の中へと入り消えていった。
苦悶の表情を浮かべた少女は暫く唸っていたが、イルドが封印の呪文を唱え終わると表情が和らいでいき、そのまま意識を失った。
安らかな寝息を立て始める柔らかな頬を撫で、イルドはひとまず安堵する。
「でも、もって、1か月……」
それまでに、あの恐ろしい激痛で全身を蝕む呪いを消す方法を探さねば。
次に呪いが発動した時には、この少女の身体は持たないだろう。
イルドはとんでもない状況だというのにフッと微笑んだ。
「ああ……旅をする目的が出来ちゃったわね」
最初のコメントを投稿しよう!