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「……可愛いね」
「ん? 惚れたかい?」
「何でそうなるんだよ!」
イルドが茶化すと息子は怒り、頬を膨らましぷいっと顔を背けた。
そんな息子を見て可笑しそうに笑いながら「まぁ、確かに可愛いね」とイルドは同意した。
「イルド様おかえりなさいませ。入浴はどういたしますか?」
イルドがゆっくりと歩いていたため追いついたもう一人の老いたメイドは息を整えるとゆっくりとそう尋ねた。
「この子が目覚めてからにするよ。私より汚れているからね」
「おや、まぁ」
言われて初めて少女の存在に気づいたメイドは目を丸くした。
だがすぐ微笑むと「まぁまぁ可愛らしい子だこと。男物しか服はありませんが、坊ちゃまの昔の洋服で綺麗なものを用意しておきますね」と言い頭を下げた。
「うん、そうしてくれると助かる。よろしくソギア」
ソギアと呼ばれた老いたメイドはにっこり微笑むと小走りでその場を離れた。
そのすれ違いで若いメイドが布団を持って戻ってきた。
「坊ちゃんのスペアを持ってきました。小さい体なのでこの布団がぴったりでしょう」
「ああ流石、仕事が早くて助かるよコナー。私のベッドの隣に敷けるかい?」
「お任せを」
コナーと呼ばれた若きメイドは布団を持ったまま器用に頭を下げると足を速め先にイルドの部屋へと入った。
「母さん、この子一緒に住むの?」
さっきまで膨れていたが、一連の会話や動きを見て疑問に思ったようだった。
息子の問いにイルドは悩むような表情をした後「住む前に、解決しなきゃ問題があるんだよ……後でちょっと話そうか」と少し言葉を濁して答えた。
その雰囲気でかなり重要なことだと察した賢い息子は表情を引き締め「わかった。部屋で待ってる」と答えた。
「ありがとう、タイタン」
イルドのお礼の言葉と笑顔に、タイタンもにっこり笑顔を返し、その場を離れた。
いても邪魔になるだろうからと、判断したのだろう。
本当に利口な子に育ったと、イルドは内心感涙した。
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