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ソギアが危険人物ではないとその瞳で見抜いたのだろう。
冷や汗一つもかいていないので、人を見抜くのは自然と出来るほど使いこなしているということだ。
これは、嫉妬しない人の方が少ないだろう。
恵まれた能力を持ち生まれた少女。
だが、生まれた先は嫉妬に塗れた場所で。
恵まれたのに、呪われた少女。
何とも皮肉で、やりきれない。
少女のことを思うとイルドは言葉で言い表しがたいモヤモヤとした感情を胸で覆われ息が詰まった。
だが、そうやって少女を思いやって苦しんでばかりでは何もならない。
イルドは一度思考を巡らすのを止めて、少女の情報を集めることに専念しようと方向を変えた。
「そういえば自己紹介がまだだったわね。私はイルド。彼女はソギアよ。貴女の名前は?」
「カルネ」
少女は特に警戒することもなく答えた。
「そう。じゃあカルネ。両親は?」
「――っ」
イルドの質問にカルネは顔を強張らせ、俯いた。
質問を急ぎすぎたとイルドは後悔し、自分を責めた。
あまりにも彼女が利口に見えてしまい、いきなり聞いても大丈夫だと勝手に判断してしまった。
普段ならもっと慎重に接するのに、それをしなかった。
いや、何故かできなかった。
色んな交渉もしてきたイルドの本能が、聞くべきだと直感したのだ。
「……賢者と、呪術師。私に呪いをかけたのは、呪術師の母です」
ソギアの息を飲む音が聞こえた。
イルドは振り向きソギアに目配せをすると、口を手で覆っていたソギアは頷き持ってきた服を置くと早々に退室した。
「呪い、封印してくれたんでしょ?」
カルネの問いにイルドは頷き「でも、一ヵ月しかもたない」と視線を伏せた。
「そっか、じゃあ、私、後一ヵ月しか生きれないのか」
カルネはそう笑って、ポロっと涙を零し始めた。
「……お母さん、私が嫌いって、叫んでたの」
少女の目から涙があふれ出していく。
「だから、なら、死んでもいいって、思った。けど、私、やっぱり、生きたい……」
イルドは胸が痛くて歯を食いしばった。
あの激痛の苦しみの中。
母親の言葉に傷ついた小さな少女は、生きたいという思いが悪いことだと葛藤していたのだろう。
そして、その痛みと葛藤の中、自分では死から逃げれないと察したのだろう。
だが。
全てを見透かす瞳で、イルドが自分を助けてくれる存在だと見抜き。
本心があふれ出たようだった。
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