緋色の過去 麻衣 微妙な葛藤

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緋色の過去 麻衣 微妙な葛藤

 真理子さんとの関係は続いていた。仲の良い年の離れた 女友達として・・・。もうすぐ私は三年生になろうとしていた。 真理子さんとの仲は進展がないと云えばそうであった。 でも、強くその先への進展を望んでいた訳でもなかった。  真理子さん。カラオケが好き、辛い物が大好き、お酒が好き。 運転免許の更新を忘れ焦る、意外と寝坊する人、若い頃は遅刻魔 塩でお餅を食べる人、豆類が大嫌いな人、全裸で寝る人・・・。 お付き合いが進むにつれて、真理子さんの様々な面を知ることになる。 私は、そんな真理子さんが大好きだった・・・。 このままでいい・・・。それで私は幸せだし、楽しい・・・。  一時期の、強い憧れと恋心は少しだけ鎮静しつつあった。 「熱し易いが醒めやすい」と言う言葉かある・・・。 「好きな物は毎日でも飽きない」と言う言葉もある・・・。 私の場合は・・・。 「好きな物を毎日・・・そして突然飽きる」昔からこのパターン なのである・・・。そんな気持ちに陥るのが少し怖かった。 そして、自身に対する葛藤もあった。私はレズビアンなのであろうか。 まだ、そんな部分に疑いを持ち、そして否定する気持ちも残っていた。 この時期、「麻衣は同性愛者だよ・・・」と言う自分。 「麻衣は違う・・・」と否定する自分が常に混在していた。 「ちゃんと受けいれなきゃ」と割って入ってくる第3の自分も 存在していた気がする・・・。 頭を抱えて悩むほどではなかったが・・・・。 本当の自分を知りたい。そんな焦りが顔を覗かせ始めた時期だった。  6大学方面にパイプを持つ同学部の女子がいた。 合コンに何度か誘われ参加した事もあった。でも、楽しくない。 楽しいフリをしていた。医学部の男子との合コンの時は、いつもの 参加メンバーの目の色が変わった。 待ち合わせも、いつもの池袋、新宿ではなかった。麻布・・・。 この合コンを最後に、私は合コンに誘われなくなった。 私以外の女子全員がキラキラに着飾ってきた・・・。 メイクも普段と異なり、美容室から待ち合わせ場所に・・・。 私は普段の恰好だった・・・高価な洋服など持っていないし 買えない・・・。  しかし、物事と云うのはどの方向に転んで行くのか予想もつかない。 医学部男子は、普段着に近い私を素朴で質素だと、5人中3人が 私を褒めて、絶賛してくれた・・・。過去何度かの合コンで、私は 初めて、モテモテ状態・・・。 「絶対に・・・〇〇〇のスーツ着せたら似合いそう!!!」 「〇〇のパンプスがいいかも!!!」 「和食以外で何が好き??」 「メイクのパターンは??何パターン??」 私は、男子達の前で、バーチャル着せ替え人形状態だった。 その都度「ガハハ・・・」「エヘへ・・・」と痒くもない 頭を掻いて、照れ笑いしか出来ない私・・・。 そんな態度も、医学部男子達には新鮮だった様である・・・。  次回からの合コンへの誘いは・・・一切なくなった。 私は、それで良かった。確かめたかった、男子とお酒を飲んで ときめいたり、ワクワクしたり・・・特定の男子に好意を抱いたり そんな、普通の女子が抱く、普通の感情が私にもあるのか・・・。 確かめたかったから参加を拒まなかった。  確かめた結果・・・。 「私は男子には興味がない」やはりその様な結論に達した。 「この人イケメン・・・」「この人面白い・・・」 「この人気が利く・・・」その程度の感情は芽生えるが・・・。 それ以上に感情が揺らいだり、膨張したりは一切なかった。 「だからどうしたの??」って常に私に問いかける・・・。 そんなもう一人の私の存在は大きかった。 「イケメンだな・・・」「だから?だったらどうだと云うの?」 「一般的によ、一般的にイケメンだと思うだけ・・・」 そんな会話を、私の心と心が交わしていた・・・。  私が同性愛者である事の裏付けが構築されていく・・・。 捜査に例えれば、後は揺るぎのない証拠・物証が欲しいところである。 自供は現段階では聴取出来ない状態にある・・・。 まだ、自身のセクシャルタイプに疑問を持ち、否定する心もあり。 私は、黙秘権を行使しているのであるから・・・。 確たる証拠、それが揃えば、後は裁判所に逮捕状を請求出来る。  男に生まれていたら?楽しかったかな・・・?? 深い仔細は無いが、なんとなくそんな事を考えた夜だった。    
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