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最近、やたらと暑い。背の高いビルが取り囲むこの場所は熱がこもって、まるで温室。
意識が朦朧とする中、俺と同僚の橋中はスクランブル交差点に立っていた。
「橋中、今日はいつも以上に暑いな……」
「あかん……俺もう、死にそ……」
そうぼやく橋中を横目で眺め、さっき街頭でポケットティッシュと一緒にもらった小さな団扇を上下させる。
来るのは熱された風だが、何もしないよりはましだろう。
「朝日名……どっかで休憩しようや……」
弱音を吐きやがって……なんて思っていたが、俺も頭が回らなくなってきているのに気づき、その提案にのる事にした。
ちょうど信号が変わり、歩き出す。
本当に今日の暑さは異常だ……。
横断歩道の白と黒を交互に眺めていた。
その視線の先に、小さな足が現れた。
小さな足を包んでいる靴は、懐かしい戦隊もののキャラクターで……。
これ……俺も昔。
その足の主の全体を見る為、顔をあげた。
そこに居たのは……。見間違えるはずもない……小さい時の俺だ。
これは……幻覚なのか?
周りの雑音が消え、俺とその少年だけの世界になった様な気がした。
「……ひな?あさひな?朝日名?」
「……んう?」
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