数えることのない一段

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 中学の頃から、いつも回り道をして、街はずれの古い神社跡を抜けて帰るようになっていた。  神社は斜めに崩れ落ちた瓦屋根を見せた廃墟で、わたしが九つの頃にあった地震で壊れたまま放置されていた。  草深く、木々が茂り、虫や小鳥の声がして、ざわざわした街のすぐ上なのに別世界のように静かで、気持ちが落ち着いた。  季節のいい時期は、草の上に寝転んだり、本を読んで過ごしたりもした。誰も上がって来ないので、人を気にすることもなく、好きに過ごせる。こんな場所を恵まれた自分は、ものすごく幸せなのだと思っていた。
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