数えることのない一段

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「エイジ、わたしは、あなたが思っているような人間ではない。あなたが幻想するような『女』では、さらに、ない。命をかけて戦いたくなかったら、今言ったことを忘れて、会ったことも忘れて、あっちへ歩いて行ってくれないか」 わたしは言った。 「ふざけるな。おまえにどんだけの力があると思っているんだ。思い上がりもいいかげんにしろ。ここを掴まれたら声も出ねえだろう。ただの、勘違いの、行き遅れの、未経験なお嬢様がよ!」 英二は言って、手を差し込んで来る。  わたしはその手を蹴り上げ、路地に置かれていたゴミ用のバケツを相手の頭に振り下ろし、走り始める。破かれた服のまま、いちばん人が多そうな通りに向けて飛び込んで行く。
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