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「なぁ…ここでするか」
「…!?」
敦は裕太を見上げた。冗談だろ、と笑おうとしたが裕太の顔からはそれが見て取れなかった。ここは電車で、しかも朝の一番混んでいる時間帯だ。周りにバレないなんてことはまず無いだろう。
「お前何言ってんだよ。ここ電車だぞ。バレるに決まってんだろ。」
(どうか、そうだなって諦めてくれ!!)
「そうだな…」
よかった、と安堵する敦を見ていた裕太はニヤッと笑って…。
「じゃあ…バレないように声抑えてろ。」
「!!!!」
裕太の手は敦の胸元へ進んでいった。
「おい!やめろよ?」
そういう敦はお構いなく、裕太は服の上から敦の胸に指を滑らせた。薄い胸板を探るようにして円を書いてなぞり、乳首の周りまでいく。
未だ抵抗している敦は裕太を見つめていた目を自身の胸へと移す。抵抗している、嫌がってはいる…のだが、どうしても見入ってしまう。また脇の方から乳首へ向かって大きな縁を描きながら…だが乳首には触れない。触れるか触れないかというところまで来るとまた再び脇の方へと指を戻す。見ていた敦は知らないうちに少しずつ息が荒くなっていた。まだ敏感な部分に触れられてもいないのに、その分触られた時の喜びを想像して、期待してしまう。
「ふっ…おい。」
頭上から裕太に楽しそうに囁かれる。
「まだ触ってないのに…ここ…硬くしたか?」
期待して、敦の乳首は見てわかるようにシャツを突き出すようにして立っていた。恥ずかしくなって敦は視線をそらす。自分の前に立っている裕太の足元を見つめた。敦の視線が逸れても、裕太は手を止めない。円を描いていた指はだんだんと乳首へとの距離を縮めていった。近くまで来たらピタッと止まり、立ってしまった敦の乳首の外側だけ、下からカリっとかいた。
「んっ」
敦の口から吐息が漏れた。まだほんの一部しか触られていないのにたって敏感になった乳首を触られただけで、敦はもう次の刺激が欲しくなっていた。だが、裕太はその手を引っ込めてしまった。敦がゆっくりと顔を起こすと、今まで胸を触っていた手の親指をベロっと舐めていた。その舐めている舌遣いにも色気を感じてしまう。
(あぁ…キスしたいな…)
さすがに公共の場でキスができるほどの度胸は持っていない。敦のとろんとした目を汲むように裕太は目線を合わせてきた。
「やめて欲しかったんじゃなかったのか?」
嬉しそうに裕太が言った。苛立ちと悔しさを覚え、ふんっと顔ごと逸らした。
「ほら、もうすぐだぞ」
裕太に言われても返事はしてやるものか。
「拗ねるなって。」
拗ねてない!尚更悔しくなってそっぽを向き続けているうちに会社の最寄り駅に着いた。駅のホームに入って電車がゆっくりと減速をし、まわりの人達もカバンを抱え直すようにして降りる準備をしだす。淳もいそいそと出口に身を直そうとすると、興味がそれてどこかを見ていたはずの裕太が少し頭を下げて敦の耳元で囁く。
「じゃあ…帰りに」
妙に色っぽく、吐息を挟みながら言う。帰りに、とは…当然帰るだけではないのだろうと動悸が早くなるのを感じながらも裕太には嫌な顔をして見せた。
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