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移動の道すがら、父親に聞いた。
「予め、情報が欲しいな…。一年、付き合っているって話だよね?会社の人?いくつ?」
お互い余り干渉せずに来た。
父親は寡黙な人だったし、会話は少ない方だと思う。
父は30で結婚して、33で俺が生まれている。
今は48歳…出世クラスの一流会社勤務。
言うなればエリート…コブ付きといえど、モテると思う。
息子から見ても清潔感のあるダンディな父親だ。
「うん…そうだな。時々、飲みに行く小さな小料理屋の女将さんなんだ。
小さな店を一人で切り盛りしていてね、頑張り屋で真面目な人だ。歳は33だったかな。ご主人とは3年前に別れたそうで、ちょっと……その…お酒を飲むと性格が変わる人だったらしい…。」
言いにくそうに父は話した。
「なぁ…。言いたくないけどさ……騙されたりしてないよな?お金とか渡してないよな?」
歩きながら話すと、俺の方を見て父が停止した。
「そんな人じゃない。一度もお金の話をした事はない。」
真面目な顔で必死に否定した。
「いや……だってさ、小調理屋って…常連にはいい顔するだろう?他にも結婚しようとか、そういう相手いるんじゃないの? 勿論、違うと思いたいよ?でもさ、親父はさ、信じてる訳でしょ?恋は盲目って言うでしょ?」
「そんな人なら入籍の前にお前に会いたいとは言わないよ。母親になれるとは思わないけど、家族にはなれるはずだと…そう言ってくれたんだ。彼女は…美月さんは、お前のお母さんの様に頭は良くない。有名な高校を出たわけでもない。学はないと本人も言う。だけどな、人間の大事な部分がある人だと思うんだ。」
優しい顔付きで言うので、それ以上言葉を出すのはやめた。
「ふうん……会うのが楽しみだ。でも怪しいと思ったら反対するよ?」
それだけ伝えて、隣を無言で歩いた。
(みずきさんねぇ……。33…親父、15も下じゃねぇか……。)
益々、怪しいとは思えた。
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