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食事を終えて会計する頃、親父はすっかり式の日取りまで決めていた。
家族だけでひっそりとやろうと、二人で話していた。
(まぁ、どうでもいいや…)
外に出ようとすると、そこに未知との遭遇。
ただ、立っている小さな物体。
「腹…減ってないのか?」
何となく声を掛けた。
物体は頷く。
「食えないのか?食わないのか?」
「ごっくん…しないの」
(おお、話した!)
新しいおもちゃを見つけた感じだ。
物体が口を聞いた、妙な感動。
自動ドアの前に立っているのにドアが開かない。
体重が軽いんだと分かる。
(この店、自動ドアは昔のままなのか…。センサーじゃないんだな。)
上を見て思った。
センサーらしい物が見当たらない。
この小ささではセンサーでも無理だろうと考える。
「外…出たいのか?」
物体はまた頷く。
「俺と一緒なら開くよ?ほら。」
手を差し出した。
物体は俺の人差し指を小さな手で掴んだ。
この瞬間、この物体は俺の中で、未知との遭遇でも、物体でもなく、月子という可愛い妹になった。
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