ファーストコンタクト

6/6
1280人が本棚に入れています
本棚に追加
/183ページ
食事を終えて会計する頃、親父はすっかり式の日取りまで決めていた。 家族だけでひっそりとやろうと、二人で話していた。 (まぁ、どうでもいいや…) 外に出ようとすると、そこに未知との遭遇。 ただ、立っている小さな物体。 「腹…減ってないのか?」 何となく声を掛けた。 物体は頷く。 「食えないのか?食わないのか?」 「ごっくん…しないの」 (おお、話した!) 新しいおもちゃを見つけた感じだ。 物体が口を聞いた、妙な感動。 自動ドアの前に立っているのにドアが開かない。 体重が軽いんだと分かる。 (この店、自動ドアは昔のままなのか…。センサーじゃないんだな。) 上を見て思った。 センサーらしい物が見当たらない。 この小ささではセンサーでも無理だろうと考える。 「外…出たいのか?」 物体はまた頷く。 「俺と一緒なら開くよ?ほら。」 手を差し出した。 物体は俺の人差し指を小さな手で掴んだ。 この瞬間、この物体は俺の中で、未知との遭遇でも、物体でもなく、月子という可愛い妹になった。
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!