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父親との結婚後も、美月さんは小料理屋を続けていた。
料理は好きで、人と話すのも好きなのだと言う。
その子供が料理を食べず、人とも話さないのが皮肉にも思えた。
ただ、営業時間を短縮した。
生活の面倒は父親が見るし、もう住まいの家賃もいらない。
その分、家庭の事をしたいと話していた。
言葉通り、朝ごはんも弁当も作ってくれた。
料理好きと言うだけあって、美味かった。
父親の料理とは比べようもなく……。
結婚前は月子は小料理屋の奥にある4畳ほどの畳の部屋で、本を読んだりして過ごしていたらしい。
喋らない、泣かない、喚かない…おまけに食べない、飲まない……当然、トイレの回数も少ない。
美月さんにしたら手がかかる様で掛からない子供だ。
商売中は静かで、面倒もない。
もしかしたら母親の為に?なんて事も考える。
(4歳がまさかな?)
美月さんの仕事は夜の7時開店、6時には家を出る。
俺はそれまでに帰宅して、月子を預かる事にした。
勿論、帰れない時は連絡するし、事前に言う。
そうすると、美月さんは月子を店に連れて行く。
閉店は10時…父親は寄れる時は寄り、後片付けを手伝い、店を閉めて一緒に帰宅する。
まっすぐ帰宅する時もあるが、迎えだけは行く。
時々、月子を抱いて、親子で帰って来る。
月子は父親をお父さんと呼ぶが、それも滅多に聞けない。
懐いてないわけではない様だがよく分からない。
「ごめんね?もともと、笑わないし泣かないし、感情を現すのが苦手みたいなの。でも嫌がってないから、好きだと思うのよ?」
美月さんが親父にフォローを入れていた。
親父は、構わない、良い子だよ、といつも答えた。
そうやって少しずつではあるが、家族の形は出来てきた。
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