新生活

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新生活

高校生活という新しい生活デビューと共に、新しい家族との生活もデビューとなった。 春休み中に家族で式だけを挙げた。 ドレス姿の美月さんはとても綺麗で、俺も正直戸惑った。 「綺麗です。」 そんな言葉しか出てこなかった。 美月さんは控え室で月子を抱いて、 「ご迷惑をお掛けすることもあるかもしれませんが、月子共々、よろしくお願いします。良い家族になれる様に努力します。」 と、俺などに頭を下げてくれた。 会うのはまだ5回目…それでも親父の言うように人を騙す様な人ではない、と言うことは理解した。 月子は驚くほど何も食べない。 そして話さないし、笑わない。 子どもってもっと我儘で、自己主張が強いんじゃないのかと、見ていると不思議に思う。 月子は自分から何か要求する事はない。 食べない、飲まない、笑わない…ほっといたら死んじゃうだろうと、見るたびに思った。 小さくて細い、顔は可愛い、お母さんに似て美人さんだ。 天使みたい…とはこういう子を言うんだろうなと思うほど、白いドレスを着て立つ姿は、背中に羽でも見えそうな程だ。 控え室から月子を預かって式場に先に行く。 少し離れて歩いていると、披露宴会場のロビーで写真を撮られた。 「ちょっと!辞めてください。勝手に失礼じゃないですか?」 明らかに月子を撮った。 今時はネットにも流せる。 誘拐でもされるきっかけになったら堪らない。 「いや、可愛いかったから…すみません。」 写真を見せてもらう。 名刺をもらい、写真屋と分かると、自分の住所を教えて写真を送ってもらう約束をする。 写真屋に飾るのはいいけど、ネットには上げないと約束して別れた。 (これは危ないな…。) 手を差し出す。 「ん!……ん!!」 月子にしても未知との遭遇なのかも知れないと考える。 手と指が繋がれる。 小さな手。 今日から俺の妹……。 守ってやらないと…そんな気持ちにさせられた。
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