第一章 青空は満開の桜の上

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 俺は機械の中にもパネルがあったので、通信機能を使い、公安に情報を伝えようとした。でも、俺の部署は出払っていたので、代わりに秋鹿が通信を読んでくれた。  まずこの研究所が購入していた毒物、劇薬を洗いだし、それで作れる爆発物と威力を計算する。そして、毒物が拡散した場合の影響度を割り出した。  ここで購入されていた不審物は、ここの職員が購入したものではない。この職員に成りすまして、地下社会の人間が購入したものだ。その材料は、ここで組み立てられ精製されて使用される。 「周囲十キロが危険なのか……」  この研究所の周囲には民家も会社も少ないが、それでも十キロ範囲となると、相当な人数になる。 「爆発だけならば、まだ被害が少ない。問題は毒物の拡散か……」  毒物を拡散させないように、ここに真空を作り、収縮させてみるという手もある。そこに中和剤を放り込み、影響を減らす。 「澤田さん、中和剤を作ってください」 「なんですか?」  澤田は驚いた様子もなく、俺と秋鹿の計算を見ると、作成できる中和剤の量を計算していた。 「材料を手配しました。それと、貴方の名前を教えてください」 「夏目 鷹弥です」  俺が真空にする爆弾を作っていると、じっと澤田が見ていた。 「ここのシェルターは、一人用なのですよ……でも、研究所ごとにシェルターがあります」 「そうですか。では、澤田さんは中和剤を作ったら、シェルターに入ってください」  これは俺の勘でしかないが、ここを爆破されるのは時間の問題で、残された時間は短い。資材の搬入で俺が気付いたように、気付く人が出る前に、ここでテロが発生したように見せかけて、消してしてしまうだろう。 「信じましょう。夏目さん。貴方の経歴を見ましたから……」  澤田はバイオハザードのボタンを押して、皆をシェルターに入れる事にしたようだ。 「夏目さん、一緒にシェルターに入りましょう」 「一人用なのでしょう?俺は、適当な所で逃げますよ」  まだ、真空にする爆弾と、中和剤をセットしていないのだ。  澤田をシェルターに入れ、中和剤をセットしていると、どこかで爆発した音がしていた。皆がシェルターに入ったのか確認できないが、拡散しないように、ここを真空にするしかない。  バイオハザードの警報を聞きながら、俺は外に出た。
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