第二章 青空は満開の桜の上 ニ

5/8
前へ
/571ページ
次へ
 まず外に出たらパンツを購入したい。紙おむつでは、屈辱的すぎる。俺が、そのまま廊下に出ようとすると、看護士が近付いてきたのでドアに隠れた。見つかると、やっとここまで来たのに、又、ベッドに戻されてしまいそうだ。  隠れながら廊下を移動しようとしたが、どこがナースセンターなのか分からなかった。 「澤田、ナースセンターはどこ?」 「……一緒に行って、手続きしますよ」  澤田が俺の背を摘まんで、ネコのように持つと、歩き始めた。でも、人がこっちを見て、ヒソヒソと話し込んでいた。次に看護士がくると、澤田から俺を奪い取っていた。 「虐待ですか?ちゃんと抱えてあげてください」  ちゃんと持ってくれるのはいいが、位置が胸なので、中身おじさんの俺は困る。必死に逃げようとしていると、医者もやってきていた。 「あの、退院でいいですね……入院費を支払ってきます」 「検査の結果に問題はありませんけどね」  あれこれ医者が言おうとすると、澤田が遮っていた。 「私も医者ですから、大丈夫ですよ」  澤田の言葉に医者が引いてくれたが、俺はどうも引っ掛かる。澤田が医者の免許を持っているというのは分かる、でも、俺の持ち方には問題があるだろう。医者は医療の勉強ばかりで、扱い方は学ばないのだろうか。  澤田は看護士から俺を受け取ると、習った通りに俺を抱えてくれた。 「これ、労災でおりるかな……」  勤務中の事故であったが、問題はふらっと捜査に行ってしまった事だ。 「私が支払いますよ。自分の入院費の支払いと混ぜて、会社に請求しておきます」  澤田も爆破や、細菌があったので、検査入院していたらしい。 「助かる……」  澤田はそのまま俺を抱えて移動すると、支払いや退院手続きを済ませてくれた。
/571ページ

最初のコメントを投稿しよう!

971人が本棚に入れています
本棚に追加