第二章 青空は満開の桜の上 ニ

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「しかし、自分で作ったとはいえ、感心の出来栄えですよ。肌の色、髪の色は真っ白ですけど、目はオーロラ……」  澤田は、俺を抱えたまま病院の外に出ると、タクシーを拾っていた。俺は、本村の家に行きたいのだが、澤田に場所を教えていない。すると、澤田は公安に向かうようにタクシーに指示していた。 「夏目さんが退院したら、相馬さんに、ここへ来るようにと指示されていたのですよ」  確かに事件がどうなったのかも確認したい。 「分かった」  タクシーに乗り込むと、澤田は横に俺を座らせた。しかし、シートベルトが合わないのか、ブレーキで前に落ちてしまった。必死でシートに登ると、澤田は何かの資料を読んでいて、俺は全く視界に入っていなかった。次のブレーキで俺が再び吹っ飛ぶと、流石にドライバーが車を止めた。 「あの、赤ん坊をしっかり支えてください。さっきから転がっていますよ。こんなに可愛い赤ン坊、見た事ないくらいなのに、可哀想に……」  それに薄着で見ていられないと、ドライバーが澤田を怒っていた。確かに少し寒いとは思っていたが、俺も着替えを持っていなかった。 「はい、すいません」  澤田が片手で俺をつかむと、膝の上に乗せて押さえていた。 「アルビノというやつですか?」 「まあ、近いですけど、違いますよ」  俺の髪の毛は真っ白になっていて、肌にも色が無かった。でも、それは澤田にとっては、どうでもよいことで、目だけ再現したらしい。 「この子の両親が薬品を浴びて、胎児に影響が出たのですよ。解毒薬を作っている最中でしてね」  澤田も意外に、俺の素性を知っていたらしい。澤田は、俺も生まれた時は、色が無かった筈だと主張していて、失敗ではないと呻いていた。 「天使ですね。まじまじと見ると、目がブルーで大きくて、羽が無いのが不思議なくらいだ」  ドライバーは運転を再開したが、澤田はすぐに資料に集中してしまった。俺は転がらないように、必死に澤田にしがみついた。 「……羽か。いいですね」 「付けないでね」
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