第二章 青空は満開の桜の上 ニ

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 公安に到着したのでタクシーを降りると、建物の中に入った。だが警備員に捕まってしまい、澤田が説明しても納得できないようなので、相馬を呼んでもらった。すると、相馬が走ってやってくると、澤田から俺を奪って頬擦りしていた。  職場で上司に頬擦りされた場合は、セクハラになるのではないのか。 「可愛い!!!!これ、ぬいぐるみみたいだね。あら、これでは薄着すぎるね。買ってこようかな」 「相馬部長、セクハラはやめてください。中身は俺ですよ」  すると相馬は少し怒って睨んだが、すぐに目尻が垂れてきた。 「夏目も私には可愛い部下だったよ。目がくりくりで、やんちゃで……でも、これは、もう人形だね、可愛い!!!!」  相馬は俺を抱えると、部下を呼んで指示を出していた。でも、内容を聞くと、買い物のパシリであった。 「相馬部長……離してください」 「離したいけどね、それでは会話にならないでしょう」  相馬は澤田も呼ぶと、エレベータに乗り、部長室へと案内していた。 「夏目はここの捜査部の、室長でもあったのだけどね、ちょっと経歴に問題があってね、皆から疎遠にされていた」  相馬は、相馬部長となっているが、この公安の長でもあった。相馬 奈津子という名前で、長くここに勤務している。相馬も、俺が周囲から煙たがられているのを気付いていたらしい。 「問題とは夏目さんが、地下社会の出身ということですか?」 「……出身というのかな、夏目の両親はこっちの世界の人だけどね。本人が孤児院を飛び出して、地下社会にいたからね……」  それは俺も隠していない。両親が隔離病棟に入り、俺と妹は孤児院に入った。祖父母が引き取りにきたが、薬物の影響が目に出ていた俺を、引き取って育てる事を拒んで残していった。妹は祖父母に育てられたが、俺は孤児院を飛び出して地下社会に入って育った。 「それだけでもなくてね、その後も、軍部の諜報機関にいた。そこで、私がスカウトしてきた」  相馬は、地下社会に詳しい人間を探していて俺を見つけたらしい。
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