第二章 青空は満開の桜の上 ニ

8/8
952人が本棚に入れています
本棚に追加
/571ページ
 相馬は部長室に入ると、机の上に俺を置いて、部下が買ってきた服を着せようとした。しかし、その服は水色のフリルのついたもので、あきらかに女の子用であった。俺が逃げようとすると、相馬が捕まえて俺服を着せた。 「可愛い!!!!!どうしましょう。これ、持ち帰ってもいい?可愛い!!!!!この白い髪には、白が似合うけど、目がアイスブルーでしょ。水色も似合う!!!!!!妖精みたいよね」  これでは話が進まない。相馬は、俺に何を聞きたいのであろうか。 「夏目、私の息子夫婦には子供ができない。養子にならないか?」 「俺は、元の姿に戻る方法を探します。だから、養子にはなりません!」  相馬は動画を撮ると息子に送信していた。そっと、送信画面を除くと、少しアルビノだが、欲しくないかと聞いていた。俺の意思を無視して、交渉している所が相馬らしいが、俺は携帯電話を蹴飛ばしておいた。 「相馬さん、呼びだしたのは、何か用事があったのでしょう?」  相馬は思い出したのか椅子に座ると、深い溜息をついていた。 「まず、夏目。夏目をこの姿のままで夏目とするのかは、この国の法律に当てはめると、死亡にするしかない。でも、私は交渉して、夏目として生きられるようにした」  公安として、俺は残ってもいいらしい。でも、それには条件が付いたらしい。 「ちょっとね、言い難いけどね、ちゃんと誰かの子供として育てろ、もう一度、学校に行けとも言われた」  公安の刑事と、子供という両面を持つというのは、かなりハードな生活だろう。 「それと、夏目の奥さん、美紗江さんに泣かれてね……自分の子供よりも幼い夫というのは、受け入れられないそうだ。そこで、離婚したいと言われている」  それは少し覚悟をしていた。俺は美紗江の子供ではなく、夫であったのだ。血の繋がらない夫を育てるなど、美紗江にはできないだろう。 「分かりました、離婚します」  これで俺は一人になってしまった。帰る家が無いうえに、自分一人で生活もできそうにない。でも、孤児院に入るのはもう嫌だ。 「暫くは、本村が一緒に暮らすと言っていたね。今日はゆっくり休んで、明日、事故の状況と、地下社会の関わりがあるのかを、チームに教えて欲しい」  詳しい話しは、チームにしろと言うが、俺が属していた第一公安部は、テロリスト対応だろう。 「ああ、夏目は、第九公安部に移動になっているから」  公安にそんな部署があるとは知らなかった。それに、どこに存在しているのだろう。 「三人しかいない部署だけど、皆、優秀だからね。平気でしょう」  相馬が高笑いしているので、ロクな部署ではないのだろう。だが、俺もこの姿では行動が制限されるので、文句は言えない。 「澤田さんも、ありがとうございます。家に帰っても大丈夫ですよ。警察が、しばし警護していますからね」  相馬は澤田の送迎を部下に頼んだので、俺も行こうとすると、がっしりと抱えられていた。 「可愛い!!!!!服を買いにいこうかな。天使みたいなのがいいな。それに、紙おむつとミルクも必要かな」 「……全部必要ありません。俺はパンツを買います。それに、ミルクは嫌いです」  そういえば俺は、乳製品が全て嫌いなのだが、この身体を維持できるだろうか。
/571ページ

最初のコメントを投稿しよう!